貨物型と軍用型の開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 05:50 UTC 版)
「エアバスA330」の記事における「貨物型と軍用型の開発」の解説
2000年頃になると、エアバスはDC-10、MD-11、L-1011といったワイドボディ機をベースに開発された貨物専用機の後継需要を狙い、新たな貨物型の研究を始めた。2001年6月にA330の設計を活用する計画を公表し、機体仕様などを詰める作業を進めた。インドの新興運送会社であるFlyington Freighters社のほか、航空機リース会社であるゲッゲンハイム・アビエーション・パートナーズ社とイントレピッド・アビエーション社から合わせて32機の受注が集まり、2007年1月17日にA330-200をベースとした貨物専用機となるA330-200Fの正式開発を決定した。 A330-200Fは、基本的にはA330-200と同じ機体フレームを用い、メインデッキ(機体上半分の客席を設ける部分)に貨物を搭載できるように大型の貨物扉の追加や床面の強化が行われたほか、旅客用設備が取り除かれた。また、ベースとなったA330-200では主脚より前脚が短く地上ではやや機首が下がった姿勢となっているが、メインデッキに貨物を搭載するA330-200Fでは前脚の取り付け位置を下げることで地上姿勢を修正された。このことにより、前脚の格納時に車輪や脚柱がはみ出してしまうため、それを収めるため機首部下面に張り出しが追加された。エンジンはR-R社のトレント700とP&W社のPW4000を装備する仕様がそれぞれ設定された。A330-200Fの初号機はPW4000エンジンを装備する機体で、2009年11月5日に初飛行して試験飛行を開始した。A330-200Fの2号機はトレント700エンジンを装備し、2010年1月20日に初飛行して試験飛行に投入された。約200時間の試験飛行の大半は初号機によって行われ、2010年4月9日に欧州航空安全機関(EASA)の型式証明を取得した。A330-200Fの引き渡しは、2009年後半に開始する予定だったが開発中にスケジュールが延び、その間に貨物市場の崩壊が発生していた。引き渡しの順番が入れ替わり、2010年8月9日、エティハド航空の航空貨物部門であるエティハド・クリスタル・カーゴ社に最初の納入が行われた。 A330-200Fが開発された頃、A330-200をベースとした多目的空中給油・輸送機(MRTT:Multi-Role Tanker Transport)の開発も行われた。2004年12月20日にオーストラリア空軍が5機のA330 MRTTを発注する契約を結び、初飛行は2007年6月15日に行われ、2011年6月1日に正式運用が開始された。2008年には、アメリカ空軍の次期空中給油機としてKC-45の名で採用が決まったが、ボーイングからの抗議を米国の会計検査院が認めたことで、選定作業は振り出しに戻った。2011年2月、米空軍は767をベースとしたKC-46の採用を決定し、結局KC-45は不採用となった。
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