語頭の「ん」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 06:44 UTC 版)
日本語の現代共通語では基本的に「ん」より始まる単語が存在しない。ただし、くだけた口語や方言では「生まれる」「美味い」など語頭の「う」を鼻濁音 [ŋ] で発音することがあり、それを「ん」で表現することがある。1944年に文部省が制定した『發音符號』では、語頭の鼻濁音は「う゚」を使用するように定めたが、この表記はほとんど浸透せず、現在では語頭の鼻濁音と「う」を特に区別する場合、単に「ん」と表記されることが多い。 某という言い換えと同様に、内容をぼかす用法がある。例:数千円のことを「ン千円」と書くなど(ただし発音は通常「ウンゼンエン」とする。発音通り「ウン千円」などと表記することもある)。 琉球語には「ン」から始まる単語が多数見られ、中でも宮古方言の「んみゃーち」(ようこそ、の意味)は有名。与那国方言などにもみられる。 本来「馬」「梅」は「ンマ [m̩ma]」、「ンメ [m̩me]」と発音され[要出典]ており、伝統的な東京方言をはじめ、方言として残る地方もある。古典的仮名遣いでは、「馬」は「むま」と書かれた。また、これらはいずれも大陸からの移入種であり、遡れば中期漢語の「マー」「メイ」という発音にたどり着く[要出典]とされている。 東北方言には、「んだ」(そうだ)、「んで」(それで)のように、そ系列の指示語と助詞の組み合わせの一部に「ん」から始まる文節がある。また東北方言以外でも、くだけた口語で「そんな」を「んな」と省略して発音することがある(用例:んな事あるわけ無いだろう)。文頭に「ん」が来ている例として指摘できる。 日本語以外の言語に於いても、「ン」から始まる言葉は少ない。外国語の単語を仮名表記する際、基本的には鼻音で始まり後続する音が母音でない場合に、「ン」で始まる言葉として表されることがある。ただし、外国語音を日本語でどう捉えるか、仮名でどのように表記するかという問題があるため、その多寡を単純には結論づけられない。 広東語には [ŋ̍] および [m̩] という音節主音が存在する。例えば漢姓によくある「呉」の発音は [ŋ̍] であり、香港の喜劇俳優「呉孟達」の名前を片仮名表記する場合「ン・マンタッ」と書く。 台湾語(閩南語)で「黄」および「阮」の発音は [ŋ̍] である(声調が異なる)。どちらも姓として使用する。 ベトナムで最もポピュラーな姓は「阮」 (Nguyễn) であるが、日本語では「グエン」と表記することが多い。 インドネシア・バリ島の玄関口であるデンパサール国際空港の正式名称はイ・グスティ・ングラ・ライ国際空港(Bandara Internasional I Gusthi Ngurah Rai) であり、これは独立戦争の英雄グスティ・ングラライに因んでいる。ただしこれについては、「グラライ」の片仮名表記もまた存在する。 アフリカではンジャメナ(チャドの首都)、ンゴマ、ンゴロンゴロ、キリマンジャロ (Kilima-Njaro)、ユッスー・ンドゥールなど「ン」から始まる名前・単語が存在する。ただし「ン」の代わりに、「ウン」、「エン」、「エム」、「ヌ」、「ム」に置き換えられることがある。(エムボマ、エンクルマ、ヌデレバ、タボ・ムベキ) イタリアにはンドランゲタ ('Ndrangheta)という犯罪組織が存在する。 いろは四十八組に「ん組」は存在しなかった。最後に追加された48番目の組は「本組」と称した。 しりとり遊びにおいては、次に繋げられないために、「最後に『ん』の付く言葉を言った者が負け」というルールになっていることが普通である。 発音が聞き取りにくいため、日本の自動車用ナンバープレートには「ん」が用いられない。 落語の演題の一つに『ん廻し』がある。 五味太郎作の絵本に『ん ん ん ん ん』という作品がある。作品内で文字は「ん」しか使われていない。
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