認識精度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 18:37 UTC 版)
1990年代中ごろ、アメリカ合衆国エネルギー省 (DOE) は情報科学研究所 (ISRI) に印刷文書の認識技術育成という使命を与えた。それにより5年間に渡って Annual Test of OCR Accuracy がまとめられた。 ラテン文字の活字文書の正確な認識はほとんど解決済みの問題だが、識字率(文字を正しく認識する確率)は100%ではなく、間違いの許されない状況では人間が結果を確認する必要がある。19世紀および20世紀初頭の新聞を使った研究によると、単純に文字単位で認識する市販のOCRソフトウェアの識字率は71%から98%だった。手書き文字、特に筆記体の手書き文字認識や文字数の多い言語の文字認識ではまだ研究の余地がある。 文字認識の精度はいくつかの測定法で表され、実際に使用した測定法によって精度は大きく左右される。例えば、文脈や辞書を使わずに純粋に文字単位で認識する場合、識字率が99%であっても、単語ベースの誤り率は5%となるかもしれない。 光学文字認識と混同される機能にオンライン文字認識がある(手書き文字認識参照)。OCRは基本的にオフラインの文字認識であり、純粋に文字の静的な形状を認識する。一方オンライン文字認識は、文字が書かれる動的な過程を認識する。例えば、PenPoint OS やタブレットコンピュータなどがジェスチャーを認識するのもオンライン認識の一種であり、ペンがどういう方向にどれだけ動いたかを認識する。 手書き文字認識システムは近年、商用で成功している分野である。この技術はPalm OSなどが動作する携帯情報端末で入力手段として採用された。Apple Newtonがこの技術の先駆者である。これらの機器では筆順や速度や線の方向が入力時に分かるので比較的認識が容易である。また、ユーザー側も徐々に認識されやすい文字を書くようにトレーニングされるという面もある。一方、紙に書かれた手書き文字を認識するソフトウェアには上記の利点が無いため、識字率はいまだ十分とは言えない。きれいに書かれた手書き文字でも識字率は80%から90%であり、1ページにつき数十個の認識不能文字が出現することになる。これは非常に限られた分野でしか実用化できないレベルである。 筆記体文書の認識は研究が盛んであるが、識字率はさらに低い。筆記体の文字認識の識字率を高めるには、文脈や文法の情報を使わなければならない。例えば、辞書の単語を認識するのは、手書き原稿の個々の文字を認識するよりも簡単である。小切手に書かれた数字の列は小さな辞書を使えばよいので識字率を上げることができる。スキャンしている文書の言語の文法に関する知識があれば、単語が名詞なのか動詞なのかを判別することが可能となり識字率を上げることができる。手書き文字の形だけでは正確な認識(一般に98%以上)は不可能といってよい。
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