設計値としての古墳の体積
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上記の労働力推定の研究にとって、体積の把握が大前提となっている。 一方で、中国では、三国時代の魏の数学者・劉徽が、著者不明の紀元前の数学書『九章算術』の数学問題の註釈本として263年に著した『九章算術』(※劉徽 註『九章算術』)の巻第5「商功」に、冥谷(地下式の墓室)の総体積・一人一日で運ぶ体積・人夫数を求める例題がある。263年と言えば日本では古墳時代の最初期に相当する。 《 原 文》 ※字は旧字体。約物は現代の補足。今有冥谷、上廣二丈、袤七丈、下廣八尺、袤四丈、深六丈五尺。問、積幾何。荅曰、五萬二千尺。載土往來二百步、載輸之間一里、程行五十八里。六人共車。車載三十四尺七寸。問、人到積尺及用徒各幾何。荅曰、人到二百一尺五十分尺之十三、用徒二百五十八人一萬六十三分人之三千七百四十六。術曰、以一車積尺乘程行步數爲實。置今往來步數、加載輸之間一里、以車六人乘之爲法。除之、所得卽一人所到尺。以所到約積尺、卽用徒人數。 ──劉徽 註『九章算術』卷第五「商功」 《書き下し文》 ※字は新字体、文は文語体。今、冥谷有り、上広二丈、袤七丈、下広八尺、袤四丈、深六丈五尺。問う、積は幾何ぞ。答えに曰う、五万二千尺。土を載して往来すること二百歩、載輸の間一里、程行五十八里。六人、車を共にす。車に載すること三十四尺七寸。問う、人の到す積尺及び用徒、各々幾何ぞ。答えに曰う、人の到すこと二百一尺五十分尺の十三、用徒二百五十八人一万六十三分人の三千七百四十六。術に曰う、一車の積尺を以て程行歩数に乗じて実と為す。今の往来歩数を置き、載輸の間一里を加え、車六人を以て之に乗じて法と為す。之を除すれば、得る所は即ち一人の到す所の尺なり。到す所を以て積尺を約せば、即ち用徒の人数なり。《口語解釈例》 ※文は口語体。角括弧[ ]内は補足文。丸括弧( )内は解説文。今、冥谷がある。上は広(※東西の長さ)2丈・袤(※南北の長さ)7丈、下は広(※東西の長さ)8尺・袤(※南北の長さ)4丈、深さ6丈5尺。問う、体積は如何ほどであるか。答えにいう、52000立方尺。[荷車に]土を積載して往復すること200歩、積み卸し分は1里、規程の仕事量は歩行距離58里である。6人で1台の荷車を共に使う。[1台の荷車の]積載量は34.7立方尺。問う、1人が運び出す体積及び必要な人夫の延べ人数は、それぞれ如何ほどであるか。答えにいう、1人が運び出す体積.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}201+13⁄50立方尺。必要人夫数258+3746⁄10063人。術にいう、荷車の積載量を規程の仕事量の歩数に掛けて、実とする。今の往来の歩数を置き、積み卸し作業分1里を加え、車6人をこれに掛けて、法とする。実を法で割ると、得られた値は、すなわち1人の運び出す体積である。その体積で冥谷の容積を割ると、すなわち必要人夫数になる。 この内容から、古代中国では墳墓を築く際、その土木工事の施工計画に体積を用い、労働力の計算を実際に行っていたことを窺い知れる。日本でも古墳築造時において、設計値としての土量あるいは体積が、古墳の計画的築造を決定・把握する上で非常に重要な数値であったとする考え方がある。
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