西洋哲学史観と哲学的プロジェクト
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「ミシェル・オンフレ」の記事における「西洋哲学史観と哲学的プロジェクト」の解説
オンフレは『反-哲学史(Counter-history of Philosophy)』と呼ばれる哲学史プロジェクトのもと、9冊の著書を発表している。各巻において、オンフレは西洋哲学の特定の時代について論じている。このシリーズの構成は次の通り。 『古代の智慧(Les Sagesses Antiques)』(2006年)(西洋古代について) 『キリスト教的快楽主義(Le Christianisme hédoniste)』(2006年)(ルネサンス期のキリスト教的快楽主義について) 『バロック期のリベルタン(Les libertins baroques)』(2007年)(バロック期のリベルタン思想について) 『急進的啓蒙主義(Les Ultras des Lumières)』(2007年)(ラディカルな啓蒙思想について) 『社会幸福主義(L'Eudémonisme social)』(2008年)(ラディカルな功利主義・幸福主義思想について) 『急進的実存主義(Les Radicalités existentielles)』(2009年)(19世紀から20世紀のラディカルな実存主義思想家について) 『超人の構築――ジャン=マリー・ギュイヨーとフリードリヒ・ニーチェ(La construction du surhomme: Jean-Marie Guyau, Friedrich Nietzsche)』(ギュイヨーとニーチェの哲学と超人(Übermensch)概念の関係について) 『異端的フロイト主義(Les Freudiens hérétiques)』(2013年) 『難治性の良心(Les Consciences réfractaires)』(2013年) あるインタビューにて、自身の哲学史観について以下のように答えている。 哲学を実践する方法は無数にあるにも関わらず、現在支配的な哲学史はその中から一つの伝統だけを抜き出してきて、それが唯一の哲学の真理であるかのように仕立てあげています。すなわち、ユダヤ-キリスト教の世界観と整合性をもつ、観念論的、霊魂論的な哲学の系譜のことです。この不完全かつ不公平な哲学史観を踏み出る思想はすべて捨て去られてきました。西洋の外で生まれたおよそあらゆる哲学が軽視されており、東洋の智慧をはじめとして、感覚主義、経験主義、唯物論、唯名論、快楽主義、その他「反プラトン哲学」に分類される思想であればなんであれ無視されてきたのです。天から降りてくるタイプの哲学――プラトンに始まり、カントとキリスト教を経由して、レヴィナスに至るまでの流れ――は、この世界の背後にある別の世界を想定することなくして、世界を理解し、説明し、正当化することができません。それとは対照的な思想の伝統、すなわち地上から上昇するタイプの哲学は、この所与の世界だけで十分だと考えるので、それ以外の世界を必要としないのです。 「オンフレの使命は、唯物論と感覚主義の思想を蘇らせ、我々と世界の関係をもう一度問いなおすことである。哲学を個人の経験を省察するための手段として用いることで、オンフレは身体と感性の可能性を探求しており、音楽、絵画、食事で肉体を寿ぐよう我々に呼びかけているのである」。
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