西松建設事件に関する発言
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2009年3月5日、漆間は定期的に開かれている記者団との懇談の席で、小沢一郎民主党代表の秘書が東京地方検察庁に逮捕される状況下にあった西松建設事件の捜査に関して発言した(発言の詳細は後述)。 この懇談の席は記者が政府の高官から政策の真意や背景を聞くために行うものでオフレコ扱いであったが、マスメディアの側では記者がニュース性があると判断した発言は「政府高官」を主語にして報道する不文律があると認識されており、政府高官が政治家が絡む事件の捜査の見通しについて言及することはきわめて異例であったことから、マスメディアの一部はこの発言をニュースと判断し、発言内容を報じた。発言に関する各紙の報道内容は、下記のとおりである。 朝日新聞政府高官は5日、西松建設の違法献金事件について、首相官邸で記者団に「自民党側は立件できないと思う。特に(違法性の)認識の問題で出来ないだろう」と述べ、自民党議員に捜査は拡大しないとの認識を示した。 読売新聞政府筋は5日、西松建設の違法献金事件について、「自民党の方にまで波及する可能性はないと思う。あの金額で違法性の認識を出すのは難しい」と述べ、自民党議員に捜査は拡大しないとの認識を示した。 日本経済新聞政府高官は五日、西松建設の巨額献金事件について「自民党に及ぶことは絶対ない。請求書のようなものがあれば別だが、金額が違う。立件はない」と述べ、事件が自民党側に波及することはないとの見通しを明らかにした。 懇談会では取材メモは取られていなかったため正確な発言の内容は明らかではないが、この発言について報じた一部メディアによれば、「政府高官」は(検察は西松建設事件で)「自民党に及ぶことは絶対ない」と述べたとされ、断定的な表現によって自民党への捜査への見通しを発言した(日本経済新聞等)と報道されている。一方で、西松建設事件について、「「自民党の方にまで波及する可能性はないと思う。あの金額で違法性の認識を出すのは難しい」と述べ、自民党議員に捜査は拡大しないとの認識を示した」と報じたメディアもあり(読売新聞、朝日新聞等)、この表現によれば、事件が自民党に波及する可能性について推定する趣旨で言及したものである。 この発言は、断定的な報道をしたマスメディアを中心に、政府の要職にあるものが「検察は自民党を立件することはない」と言明したものであると受け取られ、検察の捜査が公正中立・不偏不党であることに疑念を抱かせるものとの批判がなされた。発言を上述のように断定したものと解釈すれば、本来検察の捜査に関与する立場にない政府高官が検察の捜査情報や証拠を知っていたのではないかという疑念を抱かせ、また政府高官がマスメディアの前で「自民党への捜査はない」と断言することは検察への間接的な圧力になるとも考えられるためである。かねて総選挙間近の情勢で小沢周辺へ強制捜査が行われたことを「国策捜査」と批判してきた民主党は、この発言について国会で追及する構えを見せ、自民党内でも不用意な発言に対する批判の声があがった。 漆間は報道後の6日、「あくまで一般論であり、違法性の認識を立証するのは難しい」という観点での発言であって、報道のようなとらえ方は記者がしたもので自分の本意ではないと匿名のまま釈明し、またマスメディアが発言者として実名で報道することを拒否したが、発言をめぐる反響の広がりを受けて麻生内閣は発言者を公表することを決め、3月8日のフジテレビ「新報道2001」にゲスト出演していた河村建夫内閣官房長官が、この件の「政府高官」とは、官邸の警察マター(警察関連)担当の漆間巌官房副長官であり、前述の発言は記者懇談会での質問に対して発言した物であった事を番組中に明らかにして、政府としてマスメディアの前で初めて「政府高官」の実名を公表した。 9日、漆間は参議院予算委員会で政府参考人として答弁するとともに記者会見を行い、問題の発言は一般論として捜査に関する観測を述べたものであると公式に釈明し、またまた特定の政党を挙げた発言は行った記憶はなく、記者との間には記憶の齟齬があるとした。
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