行田市モンスターペアレント裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 07:52 UTC 版)
「モンスターペアレント」の記事における「行田市モンスターペアレント裁判」の解説
2010年9月、埼玉県行田市の市立小学校の教諭が「担任クラスの児童の保護者から常軌を逸した抗議を受け、不眠症になった」として、担任する小学3年生の児童の両親に対し、およそ500万円の損害賠償を求めて提訴する事態に発展した。文部科学省によると「こうした裁判は聞いたことがない」と述べた。 発端は同年6月、被告の子(以下A)が別の児童からぞうきんで殴られるなどのトラブルに遭遇。原告の教諭がトラブルを仲裁したが、そこで教諭がクラスで「AとB(相手児童)のどちらが悪いかを多数決で決めさせる」という趣旨の指導を行い、Bを支持する意見が多かったとの結果を受け、教諭が児童に相手児童への謝罪を強要するという出来事があった。 この日以降、Aの親から抗議を受けるようになり、教諭とやりとりする連絡帳にも、「最低な先生」「非常識」「悪魔」などといった言葉を躍らせるようになる。また、市の教育委員会や文部科学省に「困った先生」などと口頭や文書で教諭を批判し、担当替えを要求していた。別の日には教諭が給食指導中にAの背中に「軽く触れただけ」で、暴行容疑で行田警察署に被害届を提出したこともあった。 教諭と学校側は話し合いの場を持とうとしたが、Aの両親は出席を拒否。教諭は両親の執拗なクレームで不眠症になるまで追い詰められたとして、提訴に踏み切った。学校側は提訴後、行田市教育委員会に「モンスターペアレンツに負けないための訴訟」などとする文書を校長名で提出。マスコミもこれに則り、記事に「モンペア裁判」などの文字を躍らせた。 一方、Aの両親は次のように反論する。連絡帳の文言については、「連絡帳に色々と書いたのは、先生にこちらの思いを伝える手段が他に無かったから。教諭からの回答も無く、学校に電話をしても切られてしまうし、教育委員会などに相談するしかなかった。訴状や報道ではその過程が抜け落ちている」などとマスコミの報道姿勢に不満を抱いている。 Aへの“暴行”については、「(9月のある日に)子供が“先生から背中を叩かれた”と訴えてきたが、教諭は『背中を軽く触っただけだ』と認めてくれず、校長も『子供の言うことを鵜呑みにするな』と取り合ってくれなかった」と述べており、埼玉県警察に相談はしたが、被害届ではないとしている。この一件で不信感を抱いた両親は、AにICレコーダーを携帯させるようになる。 同年10月には、「背中を軽く触っただけ」の件で不満を抱いていた教諭が突然クラスの児童全員を起立させ、「Aが嘘をついたと認めて謝罪するまで、クラス全員を立ったままで授業を受けさせる!」などと強い調子で迫り、Aに謝罪を強要させるという出来事があった。この日以降、Aはクラスメートから靴を捨てられるなどのいじめを受けるようになったという。この様子はAに携帯させたICレコーダーに録音されており、両親はマスコミの取材にこの録音記録を公開している。 2013年2月、さいたま地方裁判所熊谷支部が「名誉毀損には当たらない」として、原告側教諭の請求を棄却した。判決によると、連絡帳に書き込まれた教諭を非難する内容について、「教諭の社会的評価を低下させる文言を含む」とした一方、連絡帳を見ることができるのは守秘義務を負う教職員らに限定され、「守秘義務があり、不特定多数の人に内容が広まるものとは考えにくい」と指摘。連絡帳に「悪魔のような先生」などと書かれたことについては、「ひどい先生」と同種の表現であるため侮辱は成立しないとの判断を示し、名誉毀損には当たらないと結論付けた。Aの親は取材に対し、「主張が認められてほっとした。モンスターペアレントに仕立てられ、マスコミが怖かった」などと語っている。
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