行動経済学
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行動経済学(こうどうけいざいがく、英: behavioral economics)とは、頑健かつ予測可能な形で確認されている行動科学的な知見[† 1]を考慮することによって伝統的な経済学の理論を拡張させた経済学の一分野である[† 2]。
現代(1970年代後半以降)の行動経済学は主流派経済学の合理的選択理論の枠組み[† 3]によって行動経済学が研究されており、1990年代以降の急速な発展を経て米国では既に主流派経済学の一部として扱われるようになった結果として、21世紀に入ってからはノーベル経済学賞受賞者やジョン・ベイツ・クラーク賞受賞者を輩出している[6][† 4]。 マシュー・ラビン(2001年ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞者)等の専門家が強調しているように、行動経済学(国際的に標準とされている行動経済学)はあくまでも伝統的な経済学の数学的枠組み[† 3]の範囲で研究されており、伝統的な経済学を代替したり一新・排斥したりするものではない[9][10]。
行動経済学の歴史と潮流
歴史的には、行動経済学 (behavioral economics) という分野名は1950~1960年代の「完全合理的な主体」との対比として用いられた"behavioral model" (Simon 1955) や"behavioral theory" (Katona 1968) 等の用語に由来しており、リチャード・セイラー(2017年ノーベル経済学賞受賞者)が1980年代後半にJournal of Economic Perspectives誌上に連載した一連の記事[11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24]を通じて広く普及した[1]。しかし現代(1970年代後半以降)の行動経済学は主流派経済学の合理的選択理論の枠組み[† 3]によって行動経済学が研究されており、1990年代以降の急速な発展を経て米国では既に主流派経済学の一部として扱われるようになった結果として、その先駆的研究者であるダニエル・カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞している[25][† 5]。
マシュー・ラビンはアメリカ経済学会年次大会(American Economic Association)の研究者向け教育プログラムおよび実験経済学会(Economic Science Association)の基調講演において、行動経済学の歴史を以下の3つの潮流として分類している[2][3]:
- 第1の潮流は、経済学的に重要なバイアスを発見し、経済学的な重要性を明らかにした上で、それがどのような心理学的事実に基づくのかを同定することである。この潮流における主要な研究者として、室岡 (2023)はダニエル・カーネマン、エイモス・トベルスキー、リチャード・セイラー、ジョージ・ローウェンシュタイン、コリン・キャメラーの5名を挙げている[28]。
- 第2の潮流は、上記(第1の潮流)で発見されたバイアスを伝統的な経済学の理論を拡張することによって定式化し、それが実証可能かどうかを分析することである。室岡 (2023)は「第1の潮流」に貢献したダニエル・カーネマンとアモス・トゥバスキーの2名に加えて「第2の潮流」の主要な研究者としてマシュー・ラビンとデヴィッド・レイブソンの2名を挙げている[29]。この「第2の潮流」については本記事内の「行動経済学の理論の例」の節を参照。
- 第3の潮流は、上記(第2の潮流)で定式化された「行動経済理論」を伝統的な経済学の各分野に応用することである。室岡 (2023)は「現在活躍している研究者の大半は、ここに分類されるであろう」と述べている[29]。「第3の潮流」の顕著な例としては、2018年から2019年にかけて刊行されたHandbook of Behavioral Economicsのシリーズのうち、過半数の章がファイナンス、産業組織論、健康・医療経済学と言いった各分野に行動経済学を応用した研究のサーベイ論文であった[29]。この「第3の潮流」については本記事内の「行動経済学の応用」の節を参照。
行動経済学の理論の例
伝統的な経済学が採用していた理論的仮定は、(1)定常な時間選好に基づいて割り引かれた総効用を最大化すべく各期において行動すると説明できるような効用関数が存在する、(2)効用の期待値を最大化するかのように行動すると説明できるような効用関数が存在する、(3)自身の利得に関連することのみに関心を払うという意味で利己的である、(4)ベイズ主義的に推論する、(5)他人の行動について合理的に推論する、といった特徴を持つ[30][9][31][32][33]。
これに対して、行動経済学では上記の仮定に反するような行動科学的事実を根拠として、上記の仮定とは異なる数学的仮定の下での最適化問題として個人の行動を説明する。
時間選好
行動経済学において、異時点間選択に関するトピックは時間選好 (英: time preference) と呼ばれる。非行動経済学(伝統的な経済学)では、異時点間の選択はしばしば
行動ファイナンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 04:16 UTC 版)
詳細は「行動経済学」を参照 経済主体の合理性を仮定した古典的な金融経済学とは異なるアプローチとして、経済主体の非合理性が金融市場にもたらす効果に着目した行動ファイナンス(英: behavioral finance)がある。行動ファイナンスには大別して2つのアプローチがあり、心理学的バイアスを持つ経済主体の振る舞いが市場にもたらす効果を分析する方法と、合理的な投資家が何らかの制約により非合理な投資家の取引行動がもたらした裁定機会を消化できないことで市場がどのように変化するかを分析する裁定の限界(英: limits to arbitrage)と呼ばれる手法がある。心理学的バイアスに着目した研究として、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーにより提唱されたプロスペクト理論を用いてエクイティ・プレミアム・パズルの行動ファイナンス的説明を試みた Shlomo Benartzi とリチャード・セイラーの研究や、投資家に代表性ヒューリスティックと保守性バイアスを仮定することで数値シミュレーションにより株式のモメンタム効果を再現する事に成功したNicholas Barberis(英語版)、アンドレ・シュライファー、Robert Vishny(英語版) の研究などがある。裁定の限界についての研究として、ノイズトレーダーと呼ばれる非合理な投資家がもたらした裁定機会をヘッジファンドなどの裁定投資家が顧客から預かっている資金量についての制約の為に消化できないという理論的な結果を導き出したアンドレ・シュライファーと Robert Vishny の研究などがある。
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