ファーマ-フレンチの3ファクターモデルはなぜ有効か
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 09:47 UTC 版)
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ファーマ-フレンチの3ファクターモデルがなぜ有効かを説明するには2つの方向性があり、効率的市場仮説や投資家の合理性などの伝統的経済学の価値観に沿ったものと行動ファイナンス理論に沿ったものがある。 ファーマとフレンチ自身は前者の立場を取っており、ファーマ-フレンチの3ファクターモデルを発表した論文の前年に出版されたCAPMの妥当性を実証的に否定した論文では、時価総額と簿価時価比率は投資家のリスク態度を反映するファクターを代理しているにすぎないとした仮説を立てている。つまり、市場の株式はあくまで適正に価格付けられていて、時価総額が小さい株式や簿価時価比率が高い株式はそのファンダメンタルズに起因した高いリスクプレミアムが要求されているに過ぎないという仮説である。実際にファーマとフレンチは1995年に米国株式市場において簿価時価比率が高い企業は将来の利益が小さくなり、逆に簿価時価比率が低い企業は将来の利益が高くなる傾向にあることを実証した論文を発表している。 行動ファイナンス理論としての説明は例えば簿価時価比率リスクファクターが有効なのは投資家の過剰反応によるミスプライシングに起因しているという説がある。過去の営業利益が良かった企業の株式(グロース株)はナイーブな投資家にその傾向が将来も続くと見なされること(投資家の過剰反応)で購入され、簿価時価比率の分母にあたる時価の部分が増大することで簿価時価比率が減少し、逆に過去の営業利益が悪かった企業の株式(バリュー株)は売られることで簿価時価比率が増大する傾向にあると考える。この状況下ではバリュー株戦略を取ることで価格がファンダメンタルズに収斂する過程で利益が得られ、簿価時価比率リスクファクターの有効性が検出されるという仮説である。Josef Lakonishok, アンドレ・シュライファー, Robert Vishny(英語版)は米国株式市場においてこの過剰反応仮説を実証的に検証し、リスクファクター仮説より過剰反応仮説を支持した論文を発表している。 どちらの説も一定の説得力はあるが、2000年代以降の研究においてはリスクファクター仮説の方が有力になっている。
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