血流・代謝計測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:01 UTC 版)
脳内のグルコース代謝や血流量、血液中の酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンなどについて測定する手法。非侵襲的であり、一定の時空間解像度で脳活動を計測可能であることから、脳機能イメージングでは比較的よく用いられる手法である。時間解像度については、酸素代謝の測定では、数ミリ秒の時間解像度も可能になっているが、血液は血管を通じて拡散するため、血流を指標にすると空間的解像度に限界がおこる。このため、血流から脳内における情報処理順序の推定や接続関係について推論するのは難しい。また、脳血管として、太い動脈、静脈の影響を取り除いて、代謝に関係する毛細血管からの情報を得ることが困難である。 fMRI 核磁気共鳴計測する方法。反磁性体である酸素化ヘモグロビンは、MRIの信号として計測できないが、脳血流の増加に伴い常磁性体である脱酸素化ヘモグロビンの変化が起こりやすい静脈内の信号変化を計測する。通常はMRIによる脳断面図に重ね合わせて活動の局在性を調べる。時間的解像度はあまり高くない。空間的解像度は非侵襲的方法としてはやや高いものの、静脈の血液変化を調べることによる限界がある。また計測中は頭部を動かすことが出来ないほか、計測機器内に金属物が持ち込めないため、感覚刺激を与える方法が制限される。現在のところ、より太い静脈ほど信号変化を起こしやすく、磁場強度の高い装置でも毛細血管レベルの反応を検出することが難しい。しかし、比較的簡便である反面、得られる情報も多く、脳機能局在方法としては現在最も用いられている方法である。 単一光子放射断層撮影(SPECT) 血流を測定できる放射性同位体トレーサーを注射などで導入し、放射されるγ線を測定する方法。脳内で多く活動した部位では血流が増加すると仮定し、トレーサーの密な部分が集中的に活動したと推定する。時間的解像度は悪いために、目的とする毛細血管反応より静脈内反応が大量に混じりやすく、また外部ノイズにも気をつけなければならない。また、放射性物質を用いるので、低侵襲的ともいえる。 ポジトロン断層法(PET) SPECTとほぼ同様の手法で、γ線を計測する。PETで用いられる同位体の崩壊ではまず陽電子が放出されそれが対消滅したとき正反対の方向に光子を放出するため、SPECTより精度の高い推定が可能である。血流だけでなく代謝も調べられる。ただしトレーサーを作るのにサイクロトロンが必要である。 近赤外線分光法(NIRS) 近赤外線領域の光を脳外から投射し、散乱・反射光を分光する方法。近赤外線が頭蓋骨を透過し、ヘモグロビンが酸素と結合した時としない時とで近赤外領域での吸光度が異なることを利用する。酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンの変化を別々に同時に計測できる利点がある。最近ではヘモグロビンの変化から毛細血管内の酸素動態も計測できるようになってきており、この方法では時間解像度は高い。光の反射・屈折経路を分離できず空間解像度は1-2cm程度となるが、活動マップと脳形態画像との重ね合わせが難しい。装置が小さく安価で、特別な電気シールドした部屋が必要なくランニングコストも低い。頭が比較的自由に動かせる利点もある。
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