董其昌と南北二宗論とは? わかりやすく解説

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董其昌と南北二宗論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 09:09 UTC 版)

中国の絵画」の記事における「董其昌と南北二宗論」の解説

明後期の理論家である何良俊(1506 - 1573年)は文徴明敬愛していた。何良俊は『四友叢説』等の著作の中で、行家(職業画家)に対する利家(文人画家)の優位説き絵画において大切なものは「韻」であるとした。すなわち、絵画には手先技術だけではなく、それを描いた人の人格気品現れていることが肝要であり、したがって文人、つまり教養と徳のある人物の描いた絵が優れているとする。また、利家が技術を学ぶことによって行家を兼ねることはできるが、逆に行家が利家を兼ねることはできないとした。高濂(16世紀後半)は、著書『燕間清賞箋』において、弘治正統年間浙派粗放筆法具体的には張路、蒋嵩、汪肇、鄭顛仙、鍾礼らのそれを「狂態邪学」という厳し言葉をもって批判したこのように「利家 = 呉派 = 文人画」を「行家 = 浙派 = 職業画家の上に置く理論は、後述董其昌の「南北二宗論」に引き継がれていく。 董其昌(1555 - 1636年)は江蘇華亭松江)の人。字は玄宰、号は思白、香光居士万暦17年1589年首席進士となり、職位礼部尚書文部大臣相当)にまで上がった。『画旨』『画禅室随筆』などの著書があり、明末期の画家書家理論家としてその後中国絵画実作理論両面多大な影響を与えた人物である。董にとって絵画とは「古人に倣う」ものであり、五代北宋董源巨然、宋の米芾米友仁元末四大家らの文人画系列絵画を学ぶべきものとした。また、画家にとって「万巻の書を読み千里の路を行く」ことが必要であり、「天地を以て師となす」「心を以て物を写し丘壑きゅうがく)は内に営む」べきであるとした。董はまた「南北二宗論」を唱えたことで著名である。南北二宗とは、中国の禅仏教北宗禅南宗禅の2派があるように、絵画にも2つ流れがあるとして、唐時代以来絵画流れ北宗画南宗画分けたのである。董の説によれば北宗画とは唐の李思訓李昭道青緑山水画に始まり、宋の趙幹・趙伯駒(ちょうはくく)・趙伯驌(ちょうはくしゅく)を経て南宋画院馬遠夏珪に至る流れであり、南宗画とは唐の王維の渲染のある水墨山水始まり荊浩関同董源巨然経て、宋の米芾米友仁元末四大家に至る流れであるという。董は南宗画、すなわち利家(文人)の画に価値を置き、行家(職業画家)の絵である北宗画は学ぶ価値がないとしたこうした論旨から、この論は「尚南貶北論」(しょうなんへんぼくろん、南をたっとび、北をおとしめる論)とも言われる。この論については、たとえば、北宗画 = 行家に分類されている李思訓が、実際は唐の皇族であるなどの矛盾点指摘されているが、董其昌与えた影響大きく南宗画北宗画という分類法数百年後の今日まで中国絵画見方規定している。 董其昌自身絵画は、抽象的構成主義的であることが指摘されている。すなわち、董の山水画画面からは、墨の濃淡変化明暗ニュアンス意図的に排除され、白の画面に黒の均質の線をもって山水構成されている。白と黒モノクローム絵画である水墨画には、写実的な描写指向する流れ抽象的な構成指向する流れとがあるが、董の山水画明暗濃淡グラデーションによる大気遠近感表出指向したものではなく、白い平面上の黒の形態による抽象的構成指向したのである。董は多く作品を紙に描いているが、これは、白い画面上の黒の線による構成をより際立たせるためには絹よりも紙が効果的であるためだといわれている。

※この「董其昌と南北二宗論」の解説は、「中国の絵画」の解説の一部です。
「董其昌と南北二宗論」を含む「中国の絵画」の記事については、「中国の絵画」の概要を参照ください。

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