自然と保全
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/08 13:44 UTC 版)
「フィンランド多島海域」の記事における「自然と保全」の解説
この海域では独特で多様な生態系が形成されている。大きな島々の自然はフィンランド本土側の沿岸地域に類似しているものの、岩礁などの非常に小さな島々は根本的に異なる環境となっている。小さな島々では樹木はほとんど生えていないものの、入り江では豊かな植生がある。この環境は、日当たりが良く、比較的長い生育期を持ち、グアノで肥やされている。一方で、ほぼ常に吹いている風と、非常に薄い土壌、場合によっては土壌が全く無いため植物の生育は限定的である。バルト海の非常に低い塩分濃度のため、海水の飛沫は植物の生育には通常の海水と比較して害は少ない。殆どの島々が岩がちであるが、その内のいくつかはサルパウッセルカ(英語版)分水嶺の延長に存在し、これらはモレーンの末端(英語版)から構成されている。この中には、オロ島(英語版)やユルモ島(英語版)が含まれる。これらの島々における植物相及び動物相は、それら岩がちな近隣の島と比較して多様である。 この環境は1つの小さな島の中でさえ大きく変化する。これはこれらの島を形作る岩の特徴によるものである。小さな淡水沼、淡水池、汽水池、灌木林、草地、風化した岩々、風の吹きつける海岸、外洋から守られた小湾が直径数十メートルの小島に存在する。この環境のため多くの植物が表現型が変化している。例えば、小島に生えるビャクシン属は、高さ0.5メートル (1.6フィート)以下迄しか成長しないが、数平方メートルを覆う様に成長している。 島々の陸地と沿岸の生態系とは対照的に、海の生態系においては生物多様性は幾分低いものとなっている。この理由として海水の塩分濃度が低いことが挙げられる。群島内の塩分濃度は僅か0.6%である。現在の塩分濃度は過去の塩分濃度とは大きく変化しており、各生物種はこの環境変化に適応することが困難だったためである。しかしながら、特有の生物種が多いことは好ましい環境であることを示している。生息数の多い魚類は、バルトニシン、パイク、ホワイト=フィッシュ、パーチ、カレイやヒラメである。 この地域では、フィンランドの他の地域では見ることの出来ない多くの生物が生息している。ネズミイルカがそのような生物種の一例である。本種はバルト海北部で常に見ることの出来るクジラ目唯一の生物である。バルト海での現在の生息数は約600個体であると推計されており、推定1万から2万頭ほど生息していたとされる1世紀前と比較して、大きく生息数を減らしている。他の例として、オジロワシが挙げられ、諸島内で重要な繁殖個体群である。諸島内において、珍しいもしくは絶滅寸前の鳥類や哺乳類としては、オニアジサシ、スズガモ、ハイイロアザラシ、ワモンアザラシが挙げられる。 この地域の島々は海鳥の停泊所でもある。この海鳥には、コブハクチョウ、ハジロウミバト、カンムリカイツブリ、そして様々な種類のカモメがある。近年カワウが群島内に進出しており、生息数を増やしている。しかしながらこのことは、カワウが密に生息し、彼らの排泄する糞が周囲の植物の生命を最終的に害するため自然愛好家には必ずしも好ましいものとは見做されていない。 この地域の環境に対する最も大きな脅威は、主に農業と養殖業が原因の富栄養化である。このことは、バルト海では特に脅威となっている。これは、バルト海が非常に浅く、人類の活動の影響を薄め、拡散させる力が低いためである。富栄養化は、部分的にはフィンランドの制御下に置かれているが、バルト海の全体的な状況が悪化しているため、その影響全体は覆い隠されてしまっている。 この群島の多くの地域は、それらに近づくことが非常に難しいことから人間の活動から守られている。この海域の南部は、サーリストメリ国立公園(英語版)(フィンランド語: Saaristomeren kansallispuisto、スウェーデン語: Skärgårdshavets nationalpark)に含まれており、数多の小さな自然保護地域が設定されている。そこには、春から夏の間に上陸することが禁止されている。
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