自治体のアンテナショップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 20:12 UTC 版)
「アンテナショップ」の記事における「自治体のアンテナショップ」の解説
自治体が運営するアンテナショップの前身と言える存在として、1932年(昭和8年)に丸ノ内ビルヂング1階の空きブースに作られた、地方物産陳列所がある。陳列所には15の自治体が協賛し、ジャパン・ツーリスト・ビューローの案内所を併設することで外国人観光客も対象として地方物産の案内や斡旋を行った。戦後は八重洲の国際観光会館と鉄道会館で同様の事業が行われたが、これらは全て小規模ブースが集合した業態だった。平成6年頃から、各自治体が独立した店舗をアンテナショップとして運営するようになった。 自治体のアンテナショップは、自治体やその外郭団体、自治体が出資または契約する企業により設置・運営される。食品や伝統工芸など特産品の販売促進が主たる目的で、観光客や旅行者、Uターン・Iターンの喚起、企業の誘致への波及効果も狙っている。そのため消費者や企業、他の地方や海外からの来訪者も多い東京都内に置かれることが多い。都内の自治体アンテナショップは2019年時点で79店と過去最多に増えている(地域活性化センター調査)。三大都市圏の中心都市である大阪市や名古屋市など、首都圏以外にも、一部自治体が出店している。都道府県が都内に設置する場合は、主として山手線沿線とその内側の都心部に立地している。有楽町駅前の東京交通会館のように、複数のアンテナショップが集まる施設もある。東京都も都内に設置しており、中には北海道や沖縄県のように複数のアンテナショップ(地元を含む)を展開する自治体もある。期間限定や、都道府県でなく市町村が商店街などに設けるアンテナショップもある。 特産品の販売所だけでなくギャラリー、観光情報コーナーなども備えられている店もある。首都圏在住者などにとって遠方の物産や観光情報を入手できるだけでなく、地方出身者が故郷の食品などを買える場でもある。中には北海道の北海道どさんこプラザ、宮城県の「コ・コ・みやぎ」、新潟県の「ネスパス」、香川県・愛媛県共同設置の「せとうち旬彩館」、鹿児島県の「かごしま遊楽館」など飲食店を併設するものもある。 徳島県が2018年に開設した「Turn Table」(ターンテーブル)は宿泊も可能である。 企業の場合にも共通するが、アンテナショップはPR活動が重要な要素となるため、都市部の中でも立地の良い場所が必然的に選ばれる。そのため、テナント料をはじめとした維持費が高くつくのが難点といえる。アンテナショップへの公的資金の投入額は最小で300万円、多いところでは2億円程度と言われており、人気店以外では採算割れする店も少なくない。徳島県のように、自前のアンテナショップに替えて、近隣のコンビニエンスストア内に特産品コーナーを設けたケースもある。 また最近では、地方の特産品・加工品等を地元の住民がそもそも知らない、というケースも増えていることから、地域による地域のためのアンテナショップを管内に設置する動きも出てきている。鳥取県の鳥取中部ふるさと広域連合が運営する「Coup! la cafe」(クラカフェ)などがその代表例である。
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