綿の排出と排尿回数の関係
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「綿ふき病」の記事における「綿の排出と排尿回数の関係」の解説
田尻医院での月別排尿回数と膿瘍切開回数対比表/切開:腫瘍切開回数・排尿:排尿回数 西暦1957年6月から1965年9月1957年1958年1959年1960年1961年1962年1963年1964年1965年切開排尿切開排尿切開排尿切開排尿切開排尿切開排尿切開排尿切開排尿切開排尿1月 -- -- 1 106 0 46 2 7 0 8 1 16 0 26 0 26 0 31 2月 -- -- 1 95 2 28 5 9 0 9 0 10 0 27 0 29 0 31 3月 -- -- 3 97 3 26 2 10 0 10 0 10 0 29 0 30 0 30 4月 -- -- 0 84 1 32 3 8 0 8 0 13 0 32 0 29 0 29 5月 -- -- 2 207 0 15 3 11 0 11 1 15 1 33 1 31 0 29 6月 1 91 2 144 0 8 1 10 0 9 0 11 1 30 0 30 0 31 7月 0 107 5 91 0 8 2 10 0 9 0 6 0 31 0 31 0 31 8月 0 100 2 61 0 10 1 13 1 10 0 11 0 31 0 31 0 34 9月 0 104 0 60 3 9 0 5 0 12 0 12 0 30 0 31 0 30 10月 2 110 2 68 3 11 2 8 0 35 0 14 0 31 0 31 -- -- 11月 0 117 4 89 3 10 0 8 0 12 2 15 0 30 1 34 -- -- 12月 2 104 0 64 4 10 0 6 0 11 0 22 0 30 0 30 -- -- 年間計5733171166192132010511444155236023630272一般の入院患者同様、N農婦に対しても血液検査や尿検査が行われた。入院当初より1日当たりの排尿回数はほぼ2回、多い日でも4回と少なく、しかも1回あたりの尿の量は一般的な紙コップ1杯分(7オンス、約205ミリリットル)程度しかなく、乏尿と言える値であった。 尿の外見上の所見は、非常に濃い色を帯びていて濁りもあり、膿や細菌に加えてタンパクが認められた。そればかりでなくヒトの体内には存在しえないデンプンと考えられる物質が確認された。顕微鏡で確認するとデンプンの粒と思われる小さな粒状のものが無数にあったため、試しに尿中にヨウ素液を滴下すると尿が青色に変色したのである。しかし不思議なことに、皮膚に生じた創口の膿の中からはデンプンは一切確認されなかった。 また、尿中に綿が混ざっていることもあり、試験管に尿を入れ箸でかき混ぜると、箸の先端に綿毛が付着してぶら下がった。N農婦は左右両方の脇腹に鈍痛を終始訴えていることから、腎臓にも皮膚に見られるような病巣が存在する可能性が考えられ、血液中の尿素窒素(BUN)も正常値の3倍に達した。 1959年(昭和34年)の2月以降になると排尿回数は1日に1回ほどとなり、次第に全く排尿のない日が増え2日に1回、3日に1回、1週間に1回になるときもあり、1960年(昭和35年)末から翌年にかけた年末年始には、排尿のない期間が11日間に達した。 通常であれば11日間も尿が止まると尿毒症を発症して死亡するケースが多いが、N農婦には乏尿症状特有のむくみや頭痛もなく血圧も正常値であり、むしろ気分良好であったという。同年の初夏頃より排尿の回数が回復し、1963年(昭和38年)には1日ほぼ1回、紙コップ1杯分になったが、逆に排尿の回数が増え始めてから体のむくみや頭痛が起きている。 田尻は記録を続けていく中で、綿束を含む膿瘍が頻繁に発生していた時期には尿の量が少なく、膿瘍の発生が衰えてはじめてからは尿の量が増えていることに気が付いた。原因はわからないものの、「綿の生産」と「尿量」との間には何らかの因果関係があり、尿の成分中に綿が作られる何かがあるのではないかと考えた。
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