経済人類学の貢献と言語学からの寄与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/11 15:10 UTC 版)
「資本経済」の記事における「経済人類学の貢献と言語学からの寄与」の解説
マルセル・モースの贈与論は、経済的関係には道徳的・法的な義務規制が霊的な力とともに作用していることを明らかにしていたが、経済人類学は、贈与論を批判的に見直しながら、レヴィ=ストロースの文化的な構造的人類学考証とは異なって、社会科学的に実際的な慣習システムの解明に向かう。カール・ポランニーは、互酬性、再分配、交換から経済的な統合が文明史的になされているとし、市場経済が社会に埋め込まれた大転換を商品市場経済の出現にみたが、マーシャル・サーリンズは、互酬性と交換とは別原理であるとし、互酬的関係の三つの様態を明示した。一方からの援助・分与、相互恩恵の交換・契約、不均衡な否定的な収奪・詐欺・窃盗である。そして、親族体系経済から商品交換経済への移行に歴史的転換を見た。クロード・メイヤスーは、家族制共同体の経済メカニズムを実証した。モーリス・ゴドリエは、贈与しえないものとして例えば天皇の3種の神器をあげているが、贈与には想像的関係が構造化されていることをみる。 経済人類学の最大の貢献は、市場メカニズムだけが経済ではない、非市場経済システムの人類的本質を実証的・理論的に明証化したことである。市場社会、商品・労働集中社会は、近代的なシステムでしかないことが示された。 言語学者のエミール・バンヴェニストは『インド=ヨーロッパ諸制度語彙集(1969)』で経済をめぐる言語の歴史系譜を明示した。家畜と富、贈与とホスピタリティ、購買、経済的義務としての貸借、債権など、生活と経済語の歴史変化が詳述される。 こうした検証は、経済が物質的な経済学的世界だけから成り立つものではないこと、親族・家族や神・霊や文化的慣習から構成されていることを示し、産業的商品経済の暫時性を指摘した。ボードリヤールは、「物の体系」が「もの」の置かれた雰囲気や象徴交換や記号交換からもなされ、現代消費社会の解析に活用していく。経済は、物質的関係だけではない、想像的関係、象徴的関係を含んだ文化慣習を基盤にして成り立っているということだ。経済の定義的領域が拡張され、また対象が新たに設定され、経済概念空間の転移がなされた。
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