第三款 敵国の領土における軍の権力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 01:58 UTC 版)
「ハーグ陸戦条約」の記事における「第三款 敵国の領土における軍の権力」の解説
第42条:一地方が事実上敵軍の権力内に帰したときは占領されたものとする。 占領はその権力を樹立し、かつこれを行使できる地域をもって限度とする。 第43条:国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。 第44条:交戦者は、占領地の人民を強制して相手の軍またはその防御手段についての情報を供与させることはできない。 第45条:占領地の人民は、敵国に強制的に忠誠の誓いを為さしめられることはない。 第46条:家の名誉及び権利、個人の生命、私有財産ならびに宗教の信仰及びその遵行を尊重しなければならない。 私有財産は没収できない。 第47条:略奪はこれを厳禁とする。 第48条:占領者が占領地において国の為に定められた租税、賦課金及び通過税を徴収するときは、なるべく現行の賦課規則によって徴収しなければならない。この場合において占領者は国の政府が支弁した程度において、占領地の行政費を支弁する義務があるものとする。 第49条:占領者が占領地において前条に掲げた税金以外の取立金を命じることは、軍または占領地行政上の需要に応じる場合に限るものとする。 第50条:人民に対しては、連帯の責任があると認めることができない個人の行為のために、金銭上その他の連座罰を科すことはできない。 第51条:取立金はすべて総指揮官の命令書により、かつその責任をもっておこなうものでなければこれを徴収することができない。取立金はなるべく現行の租税賦課規則によりこれを徴収しなければならない。 一切の取立金に対しては納付者に領収書を交付しなければならない。 第52条:現品徴発及び課役は、占領軍の需要の為でなければ市区町村または住民に対してこれを要求できない。徴発及び課役は地方の資力に相応し、かつ人民がその本国に対する作戦行動に加わるような義務を負わない性質のものであること。 前掲の徴発及び課役は占領地方に於ける指揮官の許可を得なければこれを要求できない。 現品の供給に対してはなるべく即金にて支払い、それができない場合には領収書をもってこれを証明し、かつなるべく速やかにこれに対する支払いを履行しなければならないものとする。 第53条:一地方を占領した軍は、国の所有に属する現金、基金及び有価証券、貯蔵兵器、輸送材料、在庫品及び糧秣その他すべて作戦行動に役立つ国有動産のほかは、これを押収することができない。 海上法によって支配される場合を除き、陸上、海上及び空中において報道の伝送または人もしくは物の輸送の用途に提供される一切の機関、貯蔵兵器、その他各種の軍需品は、私人に属するものといえどもこれを押収することができる。但し平和克復後にこれを還付し、かつこの賠償を決定しなければならないものとする。 第54条:占領地と中立地とを連結する海底電線は、絶対的に必要ある場合でなければこれを押収し、または破壊することはできない。海底電線は平和克復に至ってこれを還付し、かつこの賠償を決定しなければならないものとする。 第55条:占領地は敵国に属し、かつ占領地に在る公共建物、不動産、森林及び農場に付いては、その管理者及び用益権者であるに過ぎないものであると考慮し、これら財産の基本を保護し、かつ用益権者の法則によってこれを管理しなければならない。 第56条:市区町村の財産ならびに国に属するものといえども宗教、慈善、教育、技芸及び学術の用途に提供される建設物は私有財産と同様にこれを取扱うこと。 前述の様な建設物、歴史上の記念建造物、技芸及び学術上の製作品を故意に押収、破壊または毀損することはすべて禁止され、かつ訴追されるべきものとする。
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