石川の経済のことば14ヶ条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 08:25 UTC 版)
「石川理紀之助」の記事における「石川の経済のことば14ヶ条」の解説
石川は生涯にわたり、多くの名言や格言を残している。代表的なものが、1888年(明治21年、44歳)、井上馨農商務大臣の招請を受けて上京し、郷里の農業改革の実績を報告した際に披瀝した14ヶ条の信条、すなわち【経済のことば】である。この訓言は、農業や企業経営に携わる人たちのみならず、現代人全般に向けたメッセージとして語りつがれている。 その中でも【寝て居て人を起こす事勿れ】の訓言は、実践躬行、率先垂範を意味し、石川の深いあたたかな人間愛から生まれてきたもので、石川の遺訓として著名である。なお、石川の自筆は必ず【寐て居て】で、【寝て居て】ではない。理由は、漢文の同訓異字において、【寐て居て】は<寝入っていて>、【寝て居て】は<寝床で横になっていて>を示すからである。 【経済のことば 14ヶ条】 1. 寝て居て人を起こす事勿(なか)れ自分は動かないで他人にやらせてはいけない。自分が先頭に立って手本を示し、人を動かすこと。 『農商工公報』(農商務省)=寐て居て人を起すこと勿れ 『山田村経済新報記事』(農林省)=寝て居て人を起す事勿れ 2. 遠国(おんごく)の事を学ぶには先ず自国の事を知れ外国のことを学ぶことはよいが、それにはまず自分の国のことを学んでからにしなさい。 『農商工公報』(農商務省)=遠國の事を學ふには先つ自國の事を知れ 『山田村経済新報記事』(農林省)=遠國のことを學ぶには先づ自國の事を知れ 3. 資金をのみ力にして起こす産は破れ易しお金のみ頼りにする事業は破産しやすい。 現存する石川自筆の5幅はすべて「破れ易し」と書き、「敗れ易し」ではない。 『農商工公報』(農商務省)=資金を力にして起す産は敗れ易し 『山田村経済新報記事』(農林省)=資金を力にして起す産は敗れ易し 4. 金満家の息子は多く農家の義務を知らず裕福に育った子供の多くは農家の義務を知らない。 『農商工公報』(農商務省)=金滿家の息子は多く農家の權利を知らす 『山田村経済新報記事』(農林省)=金滿家の息子は多く農家の義務を知らず 5. 経済は唯沢山に金銭を持つことに非(あら)ず農家の経済は単に金持ちになることではない。 『農商工公報』(農商務省)=經濟は唯金銀を澤山に持つことにあらす 『山田村経済新報記事』(農林省)=經濟は唯だ金錢を澤山持つ事に非ず 6. 勧業の良結果は多く速成を要せざるにあり産業を奨励して良い成果を得るには、じっくり取り組んで、結果を急いではならない。 『農商工公報』(農商務省)=勸業の良結果は多く速成を要せさるに在り 『山田村経済新報記事』(農林省)=勸業の良結果は多く速成を要せざるに在り 7. 農家にして蓄財を望まば耕地に貸付けて利を取れ農家で金を貯めたければ、農耕地に手を加えて収益を上げなさい。即ち農地を大切にしなさい。 『農商工公報』(農商務省)=農家にして蓄財を望まは耕地に貸付けて利を取れ 『山田村経済新報記事』(農林省)=農家にして蓄財を望まば耕地に貸付けて利をとれ 8. 樹木は祖先より借りて子孫に返すものと知れ山林は先祖から借りて子孫に返すものだと心得なさい。即ちみだりに自分で処分してはいけない。 『農商工公報』(農商務省)=樹木は祖先より借りて子孫に返すものと知れ 『山田村経済新報記事』(農林省)=樹木は祖先より借りて子孫に返すものと知れ 9. 人力(じんりょく)のみにて成就するものは永久の産にならず人の力のみで成し得る事は、永久の財産ではない、長く続かない。即ちよく考えて事を為すこと。 現存する石川自筆の5幅はすべて「永久の産にならず」と書いている。 『農商工公報』(農商務省)=人力のみにて成熟するものは永久の産と成らす 『山田村経済新報記事』(農林省)=人力のみにて成就するものは永久の産にあらず、【あらず】は誤植と思われる。 10. 子孫の繁栄を思わば草木に培養することを以て悟れ子孫の繁栄を願うのであれば、草木に付加価値をつけることが大切である。 現存する石川自筆の5幅はすべて「草木に培養する」と書き、「草木を培養する」ではない。 『農商工公報』(農商務省)=子孫の繁栄を思はゝ草木に培養することを以て悟れ 『山田村経済新報記事』(農林省)=子孫の繁栄を思はゞ草木を培養することを以て知れ、【草木を】は誤植と思われる。 11. 国の経済を考えて家の経済を行え国全体の利益を考えて、自分の家の利益を考えなさい。即ち国の流れをよく見て考えること。 『農商工公報』(農商務省)=國の經濟を考へて家の經濟を行へ 『山田村経済新報記事』(農林省)=國の經濟を考へて家の經濟を行へ 12. 豊年にも大凶作あり気を付けて見よ豊年の年でも大変な事態が起きるかもしれないので、注意深く観察しなさい。 『農商工公報』(農商務省)=豐年にも大凶作あり氣を付けて見よ 『山田村経済新報記事』(農林省)=豊年にも大凶あり氣をつけて見よ、【大凶】は誤植と思われる。 13. 金銭はみだりに集むる事易くしてよく使う事難(かた)しお金を集める(貯蓄する)ことは簡単だが、有効に使うことは難しい。 現存する石川自筆の5幅はすべて「よく使う事難し」と書き、「よく使う事は難し」ではない。 『農商工公報』(農商務省)=金錢は濫りに集むる事は易くして能く使ふ事は難し 『山田村経済新報記事』(農林省)=金錢は濫りに集むる事は易くして能く使ふ事は難し 14. 僥倖(ぎょうこう)の利益は永久の宝に非(あら)ず偶然に得た利益は永久の宝にはならない。 『農商工公報』(農商務省)=僥倖の利益は永久の寶にあらす 『山田村経済新報記事』(農林省)=僥倖の利益は永久の寶に非ず
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