生合成と吸収
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 21:45 UTC 版)
コレステロールは哺乳類の細胞膜において正常な細胞機能を発現するために必要であり、コレステロールはいくつかの細胞や組織でアセチルCoAを出発原料として細胞内の小胞体で合成されるか、食事から取り込まれ、コレステロールのアシルエステルはLDLにより血流を介して輸送される。そして、受容体関与エンドサイトーシスによりクラスリン被覆ピットから細胞内に取り込まれ、リソゾームで加水分解される。 まず、コレステロールの供給については胆汁酸と複合体を形成して腸管より吸収される外因性コレステロールと、主に肝臓において、アセチルCoAからメバロン酸、スクアレンを経由して生合成される内因性コレステロールとに大別される。その生合成量は外因性コレステロール量の変動を吸収するように調節されている。 外因性コレステロールは1, 200–1, 300 mgが吸収されるが、食事由来のものは200–300 mgほどであり、他は肝臓から胆汁に分泌されたものの再吸収である。したがって、体内で循環しているコレステロールの50%ほどが血流中に存在していることになる。 ヒトで体内の全コレステロール量はおよそ100-150 gほどである[信頼性要検証]。殆どが細胞膜に取り込まれたものであるが一部が代謝循環している。すなわち内因性コレステロールの生産量は低コレステロール食摂取時にはおよそ800 mg/日程度 であることがしられており、体内を循環するコレステロールのおよそ20%–25%が肝臓で合成される。 皮膚においても肝臓に次ぐ量のコレステロールが産生されており、皮膚で 7-デヒドロコレステロールからビタミンD3 が光化学的に生成される。7-デヒドロコレステロールは、ヒトを含むほとんどの脊椎動物の皮膚中で大量に生成される。ビタミンD3は、肝臓でC25の位置でヒドロキシ化の代謝を受け25-ヒドロキシコレカルシフェロール(別名 25(OH)D3、カルシジオール)へと変化し肝細胞に貯えられ、必要なときにα-グロブリンと結合しリンパ液中に放出される。 詳細は「ビタミンD」を参照 ヒトを含む哺乳類においては、皮膚以外の組織で必要とされるコレステロールあるいはステロイドホルモンなどコレステロール誘導体は生合成されるのではなく、肝臓から血漿中を輸送されるコレステロールエステルを含むリン脂質複合体を利用するデノボ合成により産生される。また体内における貯蔵について述べると、コレステロールを貯蔵するための特別な形態は存在しない。たとえばブドウ糖はグリコーゲンへ、アセチルCoAはトリグリセリドへと転換されることで蓄積される。しかし、コレステロールはそうではない。このため輸送途中のリポタンパク質(LDLコレステロール)などは体内におけるコレステロールのリザーバーとしての役割もある。末梢組織にリン脂質とともに運ばれたコレステロールエステルはリソゾームで加水分解を受けてコレステロールに戻り、さらに利用される。 このような動態を持つためコレステロールの食事からの吸収や肝臓での生合成は必須である一方、コレステロールの過剰による脂質異常症も問題となる場合も多い。 脂質異常症は、食事による外因性コレステロールの増大だけでなく、末梢組織での LDLコレステロール受容体機能の抑制も大きな因子である。家族性高コレステロール血症では遺伝的に末梢組織のLDL受容体が変成することで、結果として末梢でのコレステロール取り込みが減り、脂質異常症が発生する。また、先天的要因だけでなく後天的に脂質代謝異常も発現していると考えられ、そういった糖・脂質の複合的な代謝異常という意味でメタボリックシンドロームが注目を集めている。なお、植物油に含まれるフィトステロールがコレステロールの吸収を減少させる作用を有する(詳細はフィトステロール#コレステロールの低減を参照)。フィトステロールは小腸の粘膜細胞において一旦は吸収されるが、能動輸送によってフィトステロールが細胞外に排泄される。この時、コレステロールも一緒に排泄されるので摂取したコレステロールの吸収が減少することになる。
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