特殊な含有成分
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イグチ目 Boletalesの分類には、形態的・生態的特長と併せ、子実体や菌糸体に含まれる化学成分の違いが重視されている。ヌメリイグチ属の属内においても、含有される指標成分の組成は節ごと、あるいは種ごとに異なっている。 バリエガト酸(Variegatic acid:α-[4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-5-オキソフラン-2(5H)-イリデン]-3,4-ジヒドロキシベンゼン酢酸)およびその異性体であるゼロコミン酸(Xerocomic acid:α-[(2E)-4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-5-オキソフラン-2(5H)-イリデン]-4-ヒドロキシベンゼン酢酸)は、ヌメリイグチ属のきのこには普遍的に見出される成分であるが、チチアワタケからこれらが見出されたとする確実な報告はない。一方、ハナイグチなどと共通する橙色色素であるグレビリン(Grevilline:A、B、C、Dおよび Eの5種の異性体が知られている)や、同じくハナイグチから得られたボレグレビロール(Bolegrevilol:4-アセトキシ-5-[(2E,6E,10E)-3,7,11,15-テトラメチル-2,6,10,14-ヘキサデカテトラエニル]レソルシノール)はチチアワタケからも検出されている。 また、ゴヨウイグチ(Suillus placidus (Bonorden) Sing.)などとの共通成分であるスゥィーリン(Suillin:4-アセトキシ-3-ゲラニルゲラニル-1,2-ハイドロキシベンゼン = 1,2,4-ベンゼントリオール)も見出されている。スゥィーリン(およびその誘導体であるテトラプレニルフェノール類の一部)については抗菌性が見出されており、さらにヒトの肝癌細胞(HepG2)に対して細胞毒性を示し、アポトーシスを誘発させることが指摘されている。 このほかに、フラジン(Frazin:1-[5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル]-9H-ピリド[3,4-b]インドール-3-カルボン酸)やスゥィルシン(Suillusin:1H-シクロペンタ-[b]ベンゾフラン = (3aR,8bS)‐1‐オキソ‐2,7‐ジヒドロキシ‐3‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)‐3a,8b‐ジヒドロ‐1H‐シクロペンタ[b]ベンゾフラン‐3a‐カルボン酸メチル)も含有される。前者は初めは日本酒から単離されたが、のちに食酢・醤油・味噌などからも見出されて構造決定された化合物で、ヒト免疫不全ウイルスに対して弱い拮抗性を示す。後者は、チチアワタケの子実体のメタノール抽出物から得られるベンゾフラン系化合物で、チチアワタケ以外のヌメリイグチ属のきのこからはまだ知られていない。 なお、414種のきのこ(担子菌類399種および子嚢菌類15種)を用い、チアミナーゼ活性を調査した結果では、チチアワタケの活性は比較的小さかった(常温乾燥した子実体 0.1g当り、pH 6.0、45℃の条件下で、1時間に破壊されるチアミン量が49μg以下)という。
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特殊な含有成分
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ヌメリイグチ属を含むイグチ目 Boletalesの分類には、形態的・生態的特長と併せ、子実体や菌糸体に含まれる化学成分の違いも重視されている。 ヌメリイグチ属の属内においても、含有される指標成分の組成は種ごとに異なっている。ヌメリイグチの子実体からはバリエガト酸(Variegatic acid:α-[4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-5-オキソフラン-2(5H)-イリデン]-3,4-ジヒドロキシベンゼン酢酸)やその異性体であるゼロコミン酸(Xerocomic acid:α-[(2E)-4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-5-オキソフラン-2(5H)-イリデン]-4-ヒドロキシベンゼン酢酸)、あるいはアトロメンチン酸(4-ヒドロキシ-α-[3-ヒドロキシ-4-(4-ヒドロキシフェニル)-5-オキソフラン-2(5H)-イリデン]ベンゼン酢酸)などが見出されているが、これらはいずれもプルビン酸の誘導体であり、イグチ目に属する多くのキノコ類に広く含まれている。たとえば、バリエガト酸やグレビリン類は、最初はハナイグチから単離されたものであり、アロトメンチン酸はニワタケと共通する成分である。ハナイグチにも含有されているフェノール骨格を持った橙色色素であるグレビリンA、B、C、Dおよび E(Grevilline)もまた、ヌメリイグチから検出されている。 一方で、アミタケに含まれるボビノン(bovinone:別名ボビキノン4=2,5-ジヒロドキシ-3-[(2E, 6E, 10E)-3,7,11,15-テトラメチル-2,6,10,14-ヘキサデカテトラエニル]-1,4-ベンゾキノン)や、その誘導体で、クギタケ属の一種Chroogomphus helveticus (Sing.) Moserに多量に含まれているヘルベティコン(Helveticone:別名ボビキノン3=2,5-ジヒドロキシ-3-(3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエニル)-2, 5-シクロヘキサジエン-1,4-ジオン)などは、ヌメリイグチからは見出されていない。
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