照準・誘導装置の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 08:14 UTC 版)
第一次世界大戦における初期の航空爆撃は小型の爆弾を人間が手で投げつけて行われたが、この方法は目標への命中は難しく、兵員や目標の破壊を期待し難い物であった。やがて航空機に照準装置が取りつけられてある程度の爆撃精度の向上を見るが、それらの多くは目標と自機の位置関係を把握する物に留まり投弾のタイミングは依然として人間が勘に頼って行っていた。すなわち爆撃コースへの進入は機械的に把握できても、いつ投弾すべきかという判断は人間が行うため、ある程度以上の精度の向上は困難であった。 第二次世界大戦では、欧州戦線におけるイギリス空軍のドイツ本土爆撃作戦やアメリカ陸軍航空隊による初期の日本本土爆撃作戦では高高度精密爆撃と呼ばれる手法が採用されていたが、これは多数の爆撃機が個々の目標へ向けて一斉に投弾するというものであった。いかに精密に照準しようとも投弾後の気象条件や各爆弾の固有の空力特性から目標周辺への誤爆は避け難いため、多数の爆弾を一斉に投下することで目標をそれる爆弾を補おうとするものであった。しかし、高高度精密爆撃は特に日本本土爆撃では効果に乏しいと後に判断された。高高度精密爆撃では特定の目標を破壊するため必要な爆撃精度が確保できず多数の爆弾を用い反復して攻撃する必要があったが、迎撃機や高射砲による爆撃機の被害を考慮すると優位な方法とは言い難い側面が存在する。このため結果的に日本本土爆撃作戦は工場を目標とする精密爆撃から都市全体を目標にする焼夷弾による低高度無差別爆撃に切りかえられた。 第二次世界大戦の終わりごろ、ドイツでは何種類かの誘導爆弾が実用化された。爆弾に操縦装置を取りつけ、有線で人間が目標まで誘導する仕組みである。爆撃機から投弾された誘導爆弾の尾部には電灯が取りつけられ、これを目印に爆撃手は望遠鏡式の照準装置によって目標と爆弾の進路のずれを補正して誘導した。ドイツの誘導爆弾のうちフリッツXと呼ばれた大型の徹甲爆弾は、連合軍に降伏したイタリア海軍の戦艦「ローマ」を一発で撃沈する戦果を上げている。飛翔速度が遅い爆弾や目標の機動が遅い対戦車ミサイルなどではその後も人力誘導が使用されたが、対空ミサイルなど高速で起動する目標には対処しきれないため無線による自動誘導が開発され、多くのミサイルに採用されている。 現代のミサイルや誘導爆弾では自動誘導が多く採用され、また、航空機の多くが外部センサーによって環境の状態を把握し、最良のタイミングで投弾するように自動的に計算する爆撃コンピューターを搭載するまでになっている。そのため目標を外してしまう、すなわち爆撃の失敗を原因とする誤爆は減り、それに伴って誤爆に備えるために使用されていた複数の爆弾による爆撃も行われなくなったことによって、結果的に戦争で使用される爆弾の量そのものが減少してきている。 一方、2010年代になると、アメリカ軍を中心に無人飛行機により攻撃が行われる機会も増えた。その中、2013年12月12日にはイエメンにて、アメリカ軍の無人攻撃機が結婚式へ向かう車列を誤爆する事件が発生。新たな兵器や武器の運搬手段の進化に、照準・誘導装置が後手に回る事例を示した。
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