潮汐加速の発見の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 06:20 UTC 版)
エドモンド・ハレーが1695年に昔の月食の観測を比較し、月の動きが明らかに早くなっていると最初に言及したが、データを示さなかった(ハレーの時代には、地球の自転が遅くなっている事も含めて何が実際に起きているかは知られていなかった:暦表時も参照のこと。均一時間で測るよりも太陽時に基づく関数として測定すると、より正の加速として現れる)。Richard Dunthorneが古い記録を再検討してハレーの提示した問題を確認し、この明らかな効果の大きさを初めて定量的に見積もった。月の経度にして100年あたり+10″(秒角)という、後世の値、例えば、1786にDe Lalandeが与えた値と大差が無い、当時としては驚異的な精度で値を与え、1世紀後に与えられた 10″ないし13″近くという値に比肩する。 ピエール-サイモン-ラプラスが1786年におこなった理論的解析では太陽を巡る地球軌道が楕円であることから摂動的変化によって月の動きが加速されるとしている。ラプラスの最初の計算では効果全体を取り扱っており、昔の観測結果や、現代の観測とも近い理論であると思われた。[要出典] ところが、1854年に、ジョン・クーチ・アダムズがラプラスの計算に誤りを発見し、ラプラスの理論では地球軌道の偏芯率からは月の加速の半分程度しか説明ができないことが判り、再度問題を提示した。アダムズの発見は天文界から鋭い反発を受け論争が数年間続いたものの、結局彼の計算が正しく、シャルル=ウジェーヌ・ドロネーを含む計算天文学者は、最終的にこれを受け容れた。この問題は月の動きの正確な解析に関わるが、そのなかにあって、ほぼ同時期に為された別の発見、即ち、別の(おそらく金星の影響による)長期にわたる月の重要な摂動に関する計算も誤りであり、再検証に際しては取るに足らないものであると判り、これも理論から除去しなければならなかった。答えの一部は、1860年代にドローネとウィリアム・フェレルがそれぞれ提案した。潮汐遅滞による地球の自転時間の延長が月の加速の一部であった。[要出典] 天文学界が潮汐効果の事実と規模を受け容れるには幾許かの時間がかかった。しかし平均太陽年の測定をして最終的には3つの効果が関連していることが明らかになった。ラプラスが発見しアダムズによって修正された、地球軌道の偏芯率による摂動の変化の効果に加えて、2つの潮汐効果がある(この組み合わせはエマニュエル・リエが提案した)。1つめは、地球と月の間で潮汐による角運動量の交換により月が軌道を巡る角速度が実際に遅く なっていることで、これは地球を巡る月の角運動量を増加させる(そして月をより高い軌道に遷移させ軌道速度を遅くする)。2つめは(平均太陽時の意味で)周回軌道を動く月の角速度が明らかに加速されていることである。これは地球が角運動量を失うことによって引き起こされ、結果的に日の長さが延びる。
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