潮汐加熱
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「en:Tidal heating of Io」も参照 放射性同位体の崩壊熱が主な内部熱源である地球や月とは異なり、イオの主要な熱源は潮汐散逸であり、これはエウロパとガニメデとの軌道共鳴の結果である。この加熱は、イオの木星からの距離、軌道離心率、内部組成と物理的な状態に依存する。エウロパとガニメデとのラプラス共鳴は、イオの軌道が潮汐散逸によって完全に円軌道化されるのを防ぎ、軌道離心率の値を維持している。この共鳴はイオと木星の距離を維持するのも助けている。共鳴が存在しなければ、イオにはたらく木星の潮汐力によってイオは徐々に外側に移動してしまうであろう。イオの潮汐バルジの垂直方向長さはイオが近点と遠点にいる時では最大で 100 m ほど変化する。この変化する潮汐力によってイオの内部では摩擦や潮汐散逸が発生し、イオの内部に大きな潮汐加熱をもたらし、イオのマントルと核の大部分を溶融させる。共鳴がなかった場合はこの潮汐散逸は軌道離心率を減少させ、円軌道にするようにはたらくことになる。潮汐加熱によって生み出されるエネルギーは、放射性物質の崩壊のみで生み出されるエネルギーの最大で200倍になる。この熱は火山活動という形で解放され、測定されている高い熱輸送を生み出す (全球で (0.6-1.6×1014 W))。イオの軌道モデルは、イオ内部での潮汐加熱の量は時間と共に変化していることを示唆している。しかし現在の潮汐散逸の量は観測されている熱流量とは矛盾しない。潮汐加熱と対流のモデルでは、潮汐エネルギー散逸と地表へのマントル対流の熱を同時に説明できるような、衛星の粘性分布を見つけることが出来ていない。 木星とその衛星エウロパからの引力による潮汐加熱がイオに見られる多くの火山の熱源になっているという点については広く受け入れられているものの、火山は潮汐加熱で予測される位置には存在しておらず、東に 30〜60° ずれている。Tyler らによる2015年の論文では、この東へのずれは地下にある溶けた岩石の海によって引き起こされている可能性が示唆された。このマグマの動きが、マグマの粘度による摩擦を介してさらなる熱を生成する。論文の著者らは、この地下の海は溶けた岩石と固体の岩石の混合物であると考えている。 太陽系内の他の衛星も潮汐加熱を受けており、同様に地下のマグマや水の海の摩擦を介して熱を生成していると思われる。内部海で熱を生み出すことのできるこのメカニズムは、エウロパやエンケラドゥスのような天体における生命の可能性を高めると考えられる。
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潮汐加熱
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「TRAPPIST-1」の記事における「潮汐加熱」の解説
TRAPPIST-1系の惑星において潮汐加熱(英語版)は重要であると予測されている。fとhを除く5惑星には地球の総熱流束を超える潮汐熱流束があると予想されている。bとcは、惑星同士の潮汐によって岩石質のマントルの内部にマグマオーシャンを維持させるのに十分な加熱を経験しているとされており、特にcは、その表面にケイ酸塩のマグマを噴出する火山があるかもしれない。d、e、fの潮汐熱流束は他の惑星と比べると低いが、それでも地球の平均熱流束の20倍もあるとみられている。
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