内部の構造と組成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 06:28 UTC 版)
「エンケラドゥス (衛星)」の記事における「内部の構造と組成」の解説
カッシーニによる探査以前はエンケラドゥスの内部構造についてはほとんど分かっていなかった。しかしカッシーニのフライバイ観測によって内部構造についての情報が得られている。 ボイジャー2号による質量の推定からは、エンケラドゥスはほとんどが水氷で出来た天体であると推測された。しかしカッシーニにはたらくエンケラドゥスの重力を元に推定された質量は、それまでに考えられていたよりもずっと大きいことが判明し、平均密度は 1.61 g/cm3と推定された。この密度は、土星のその他の中型サイズの氷衛星よりも高く、エンケラドゥスはそれらよりも多い割合の岩石と鉄を含んでいることが示唆される。 Castillo らによる研究では、イアペトゥスとその他の土星の氷衛星は、土星の周囲にあった周惑星円盤の中で比較的急速に形成され、そのため短寿命の放射性核種を豊富に含んでいたことが示唆された。アルミニウム26や鉄60といったこれらの放射性核種は半減期が短いため急速に崩壊し、衛星内部で比較的急速に熱源になったと考えられる。エンケラドゥスの岩石の割合は比較的高いものの天体サイズが小さいため、冷却は急速に進む。そのため短寿命核種が存在しなければ、たとえ長寿命の放射性核種が熱源として存在しても内部が急速に固化するのを防ぐことは出来ないとされている。エンケラドゥスの岩石比率が比較的高いことを考えると、短寿命の放射性核種による加熱の影響で氷のマントルと岩石の核に分化していると考えられる。その後の放射性物質の崩壊と潮汐加熱によって、核の温度は 1,000 K にまで上昇し、内部マントルを溶融させるのに十分な温度となる。しかしエンケラドゥスが現在も依然として地質学的に活発であるためには、核の一部も溶融し、マグマ溜まりを形成している必要がある。ディオネとの共鳴や、あるいは秤動に起因する潮汐加熱によって、核における高温領域が維持され、現在の地質学的な活動の駆動源になっている可能性がある。 衛星の質量と地球化学モデルからの推定に加え、内部が分化していた場合にエンケラドゥスの形状にどのような影響が及ぼされるかという観点からの研究も行われている。エンケラドゥスが静水圧平衡状態であると仮定し、エンケラドゥスの輪郭の測定から形状を決定したものと比較すると、エンケラドゥスの内部は未分化であると考えるとよく一致するという結果が得られている。これは先述の質量と地球化学モデルから推定された結果とは相反するものである。しかし現在の形状からは、エンケラドゥスは静水圧平衡にない可能性があることを支持する結果も得られており、過去のどこかの段階では分化した内部構造を持ち現在よりも速く自転していた可能性も指摘されている。カッシーニによるエンケラドゥスの重力場の観測からは、核の密度は低いことが分かっており、核は岩石成分に加えて水も含んでいることが示唆される。
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