源氏物語巻名詠歌
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このような巻名歌をまねて本文の中に巻名の元となった言葉を含む歌があるかどうかにかかわらず、『源氏物語』全帖にわたって巻名を詠み込んだ歌を新たに作って並べた歌集も巻名歌と呼ばれることがあり、特に通常の巻名歌と区別するときには「源氏物語巻名詠歌」と呼ばれる。このような巻名歌は歌の手本とされたり、書の手本とされたり、『源氏物語』を題材とした絵(源氏絵)の中に書き込まれるなど、さまざまな形で使われている。 巻名は含まれていないものの、『源氏物語』の巻の情景を詠み込んだ歌として確認できる最も早い事例は、藤原行家撰『人家集』収録の「内裏にて源氏の巻々を題にて歌よみ侍りけるに きりつぼ」との詞書を持つ歌である。現在確認出来る範囲で巻名を含んでいる歌としては『長秋詠藻』の「寄源氏名恋 うらみてもなほたのむかな澪標深き江にある印と思はば」が最も早い時期のものであり、その後さまざまな巻名歌が作られていった。以下にその主なものや特徴的なものをあげる。 『源氏六十三首之歌』(島原松平文庫蔵本)『源氏物語』の巻名と名号を組み合わせて詠んだもの。 『源氏のゆふだすき』(島原松平文庫蔵本)「すみよしのまつに時雨のあらそひてかせのみさはくしつく成らん」(須磨、明石) 「ものことにみのりの月はちさとまてのとかにやとるかけをまつ哉」(紅葉賀) といった独特の形で巻名を詠み込んでいる。 『光源氏巻名歌』藤原定家作とされるが、『奥入』などとは巻の数え方が違うことなどから藤原定家の作ではなく、おそらくは連歌が隆盛した時期以降に作られたもの。 『詠源氏物語巻々和歌』三条西実隆が1533年10月4日に『源氏物語』全巻にわたる講義を終えたのを記念して55首からなる巻名歌を作り、『源氏物語』の成立と関係の深いと考えられていた石山寺に奉納している。 『源氏物語竟宴記』『明星抄』の著者三条西公条が『源氏物語孟津抄』(別名『九禅抄』)全54巻の著者九条稙通や二条晴良に『源氏物語』の講義を行った際の竟宴記。 江戸時代には以下のようにさまざまな巻名和歌がくり返し詠まれている。 『石山寺奉納詠源氏物語巻々和歌』(北村季吟)1704年 『詠源氏物語巻々和歌』(柳沢吉里)1728年 『詠五十四首和歌』(鴨祐為)1779年 『藤簍冊子』所収巻名和歌(上田秋成)1789年-1800年ころ 『源氏物語巻名和歌』(堀田正敦主催)1814年 『詠源氏物語和歌』伊達斉宗、松平定信ら55名による。1818年3月成立。雲隠、鈴虫の漢詩2首を含む全56首からなる。主な伝本としては国立国会図書館本、東北大学本、國學院大學本などがある。 『源氏物語の巻々にてよめる』(松平定信)1821年 『源氏物語巻々和歌』(北村季文)1823年 『詠源氏物語巻々和歌』(堀田正敦)1823年 『源氏物語礼讃歌』(与謝野晶子)
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