港湾と航路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 04:35 UTC 版)
北極海航路沿岸の港湾のうち、いくつかは年中凍らない不凍港である。西から、コラ半島のムルマンスク、カムチャツカ半島のペトロパブロフスク・カムチャツキー、北海道の釧路港、日本海側のウラジオストクやナホトカが挙げられる。極東のマガダンやワニノなどは冬には流氷が押し寄せる。北極海側の港は7月から10月は使用可能で耐氷船が運航する。またドゥディンカへは年中原子力砕氷船が運航する。2017年、ムルマンスクとペトロパブロフスクカムチャッキーには中国cosco社によるコンテナ専用埠頭が設置された。同年、ロシア政府は色丹島に関税免除の経済特区を設置した。日本でも30,000TEU対応コンテナ専用埠頭の計画意見が活発化。地理的・状況的に釧路への開設が提言されている。 北極圏では磁気嵐が盛んに起こるため、航海に不可欠な無線通信や衛星測位システムなどが使えなくなる状況も考えられる。また、激しい寒さ、荒れる気候や霧の多さ、海面を漂う流氷も安定した航海を妨げる問題である。東シベリア付近の航路では水深が20mほどの浅さになる部分もあり、船舶の大型化が制約されるおそれもある。 同航路沿岸は放射能汚染への懸念がある。ソ連時代には放射性同位体熱電気転換器を使用した無人灯台が多数建設されたが、放射性物質を中に残したまま放置されているものも多い。ノヴァヤゼムリャには核実験場があり、1961年には水素爆弾のツァーリ・ボンバ(RDS-220)を使用して人類史上最大の核実験が行われた。また流氷の衝突により船が損傷し、油流出が起こり大規模な環境破壊が進む恐れもあり、北極海航路を航行する船の安全基準、事故の際の救難体制づくりなどが必要となる。 ロシアは北極海航路の航行について、海洋法に関する国際連合条約第234条では経済水域内の氷に覆われた水域については、環境保護のため、沿岸国が特別な規則を設定することを認めていることを根拠として、ロシア政府に対する事前の届け出と原子力砕氷船・水先案内人による航行支援を義務付けている。国際航路としての利用を増やすには許認可手続き、砕氷船の料金、航路のルール作りなどの透明性確保が必要であり、ロシアの都合により航行が左右されるという不透明さが懸念される。ロシア政府は色丹島に関税ゼロの経済特区を開設後、ウルップ島にも同じ内容の経済特区を開設した。中国は2018年に初の北極政策白書を公表し、一帯一路という国策計画の一環として『氷上のシルクロード』建設を公表し、釧路港を「北のシンガポール港」として位置付け、北極海航路における釧路港の重要性が国際的にも明確となった。 ただし、この航路の一部には大型船舶の運航に制約がある。海氷の少ない期間が比較的長いサニコフ海峡は水深13mの箇所があり、それを避けるには、北極側のノヴォシビルスク諸島北側を迂回する必要がある。北側が通航不可能なら、4,000TEUクラス以上のコンテナ船は通航できない。
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