淀川の汚濁と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 21:52 UTC 版)
淀川水系の水質の悪化は昭和中期には問題になっており、昭和30年と昭和40年の水質調査ならびに比較が以下のようになる。 淀川の水質汚濁の変遷 昭和30年の淀川水系 宇治川開始付近までの本流:貧腐水性山名川:貧腐水性、ただし流入直前にα-中腐水性に悪化。 琵琶湖疎水:強腐水性 新高瀬川:強腐水性 八幡手前までの宇治川本流:右岸・α-中腐水性、左岸・貧腐水性、八幡・山崎手前で混ざってβ-中腐水性。木津川:貧腐水性 桂川:強腐水性 八幡・山崎以後以後の淀川本流:右岸・強腐水性(ただし枚方手前でα-中腐水性に回復)、左岸・β-中腐水性、芥川:α-中腐水性 枚方付近以後の淀川本流:右岸:α-中腐水性、左岸・β-中腐水性、鳥飼付近で混ざってα-中腐水性になり、以後は感潮域まで同じ。 昭和40年の淀川水系 瀬田川から宇治川の最初までの本流:貧腐水性、ただし山名川合流の手前でβ-中腐水性に悪化。山名川:α-中腐水性 琵琶湖疎水:強腐水性 新高瀬川:強腐水性 八幡手前までの宇治川本流:右岸・α-中腐水性→強腐水性、左岸・β-中腐水性→α-中腐水性木津川:β-中腐水性 桂川:強腐水性 八幡・山崎以後以後の淀川本流:右岸・強腐水性(以後鳥飼付近まで回復はせず)、左岸・β-中腐水性だが枚方手前でα-中腐水性に悪化。芥川:強腐水性 枚方付近以後の淀川本流:右岸・強腐水性、左岸・α-中腐水性、鳥飼付近で混ざってα-中腐水性になり、以後は感潮域まで同じ。 昭和30年時点で京都市から下水の流れ込む河川(桂川など)が汚いことや「(鳥飼から先の庭窪・柴島付近で)上水道の水源になっているが、両方とも上水道の水源としては好ましくない。」と指摘されていたが、昭和40年になると伏見平戸閘門から排出される琵琶湖疎水や新高瀬川が同じ強腐水性でも極めて汚くなり、合流後の右岸(前述の二河川の合流側)からかなりの距離が強腐水性になり、さらに下流でも三川(宇治川・木津川・桂川)合流点付近や御幸橋では昭和30年ではβ-中腐水性だったところが、α-中腐水性に悪化している。 さらに、三川合流点より下流では元々汚染がひどかった桂川の汚水を薄めていた宇治川と木津川の水質が悪化したため回復が進まず、山崎から柴島までの右岸には厚い汚水菌の被覆が見られ、比較的状態が良かった左岸も汚水菌が増加している状況になっていた。 こうしたこともあり、淀川水系中流域で最大の生活排水の発生地域、京都市は下水道を着実に整備し2019年度末には市街化区域の99.5%に達した。しかし初期に作られた下水道は雨水と汚水を一緒に流す合流式(約40%)のため集中豪雨発生時に汚水が未処理のまま川に流される、このため1980年代半ばから貯水幹線を順次整備して、堀川通りの下の直径6m長さ2.7 km 7万立方メートルを「堀川中央幹線」をはじめ、合計50万7千立方メートルの雨水を溜める貯水設備を整備。また4つある市営下水処理場に窒素・リンを除去する高度処理設備を導入、さらに京都の伝統産業「友禅染」製造時に発生する色素が残った汚水を処理するために2箇所の下水処理場ではオゾン処理を導入している。この結果、処理水のBODは国の基準水1リットル当たり20ミリグラムに対して京都市では水1リットル当たり3ミリグラム前後に浄化される。また西日本最大の下水処理場『鳥羽水環境保全センター』では平成25年からメガソーラーを設置、令和3年度から汚泥を燃料に加工して火力発電することが予定されている。 京都府も桂川に南丹浄化センター・洛西浄化センターを建設、八幡市の宇治川・木津川の合流部付近に洛南浄化センターが1986年3月供用開始、精華町に木津川上流浄化センターが1999年11月に供用開始するなど下水道の整備を進めている。 下流の大阪府下では上水道の取水口が複数あるため、淀川左岸の「渚水みらいセンター(枚方市)」では処理水を寝屋川へ排水、一部は京阪枚方市駅や周辺の公共施設で再利用されている。淀川右岸の「高槻水みらいセンター(高槻市)」「中央水みらいセンター(茨木市)」では処理水を安威川から神崎川へと流している。
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