海水消火管装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 04:59 UTC 版)
「ダメージコントロール」の記事における「海水消火管装置」の解説
海水消火管装置(Fire main system)は、消火液として海水を使用する装置である。海水は、船底の海水吸入箱(sea chest)から吸い上げられて消火海水管に通水されたのち、上方の消火主管に導かれる。これらの循環は、機械室などに分散配置されている消火海水ポンプを動力としている。海上自衛隊の護衛艦の場合、通例、消火主管は第2甲板(応急甲板)上に配置されており、艦が被害を受けた場合の防御を考慮して、なるべく舷側を避けて船体中心に寄せて配管される。また損傷時に機能の損失を最低限に抑えるため、大型護衛艦の場合は艦の中央部前後で消火主管を左右に分けるリングメイン方式を採用しており、前後2区分以上と左右舷2区分以上で、計4区分以上に分割される。このほか、片舷分は導設する甲板を変える場合もある。 消火主管からは、各水防区画内で枝管を導設し、消火栓が設けられている。消火栓同士の距離は15メートル長のホース2本で接続できる範囲内とされているが、これは、仮に損傷によって艦内1区画内で消火主管が使用不能になった場合、当該区画の消火栓を、他区画の消火主管に属する消火栓とホースによって接続し、仕切弁を閉鎖することで、損傷箇所を迂回して海水を導くことで、海水の循環を極力維持するための措置である。また入渠中は消火海水ポンプが停止されることから、1甲板上の消火栓と陸上の消火栓をホースで接続することで艦内火災に備えている。 この消火栓には、消火管内の海藻類による出力低下を防ぐため、濾し器(strainer)が設けられている。ここに消火ホースを接続して、ホース先端のノズルから放水を行うことができる。ノズルとしては万能ノズルが広く用いられているが、これはハンドルの位置によって、通常の直射放水のほかに水霧としての噴霧放水も実施でき、これによって油火災への対応を可能としている。また火災箇所から離れた場所から放水できるよう、ノズル先端にアプリケータを取り付けることもできる。アプリケータは先端が60度または90度に曲がっており、全長は4フィート(1.2 m)、10フィート(3.0 m)、14フィート(4.3 m)の3種類がある。 通常、消火栓の近くにホース掛(またはホース籠)が設けられ、15メートル長のホース2本を連結して収容している。片方のホースは平時から消火栓に接続されている。近くの隔壁にはアプリケータもかけられていることが多い。また数カ所には可搬式の消火ポンプが設置されているが、これは艦内の消火海水ポンプが機能低下/喪失した場合のバックアップとして用いられるほか、内火艇に搭載して他の火災などにも用いることができる。可搬式消火ポンプを用いて艦外から海水を取水する場合に備えて、アプリケータとともに消火用蛇管も隔壁に備えられているが、海水中の異物を吸入しないよう、こちらも濾し器を備えている。 また海水消火管装置から分岐して、弾庫散水管装置も設けられる。これは艦の弾火薬格納区画に散水ノズルを設置して、爆発や誘爆を防ぐため散水を行うものである。また甲板上には、汚染物除去のための甲板散水管装置や赤外線遮蔽のための赤外線対策散水管装置も設けられているが、これも海水消火管装置からの配管を受けている。海水消火管装置からの海水は、他にも乗員の汚染除去や、さらには主錨・錨鎖の洗浄など様々に用いられる。 直射モードの万能ノズル。ハンドルは手前に倒されている。 噴霧モードの万能ノズル。ハンドルは直立位置にある。 隔壁に掛けられたアプリケータと消火用蛇管
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