洋傘の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 10:23 UTC 版)
傘が使われ出したのは約4000年ほど前と言われ、エジプト、ペルシャなどの彫刻画や壁画に残っている。ギリシャでは祭礼のときに神の威光を表すしるしとして神像の上にかざしていた。紀元前7世紀のアッシリアの壁画には、国王の頭上に天蓋のようにかかげてあるのが描かれている。インドでは傘はもともと酷暑の貴族や高僧の日除けに使われていて、吉祥をもたらす八つの物の一つと数えられている。 傘が一般的に使われ出したのは古代ギリシャ時代で、アテナイの貴婦人たちが日傘を従者に持たせて歩いている絵が残っている。そのころの傘は開いたままですぼめることはできなかった。 ヨーロッパでも、天蓋から傘は発達した。ヨーロッパにおいて、永らく傘は贅沢品であり、富と権力の象徴だった。遺言書に傘を誰が継ぐのか、を書くことも珍しくなかったようである。それ故に、洋傘と比べて材料費が安く、比較的安価に手に入った和傘を使っていた日本人と比べて傘に対する見方が違い、日本で安価な材料で作られ、低額で売られているビニール傘などを見て驚くヨーロッパ人がいるともいわれる。 今日のような開閉式の傘は13世紀にイタリアで作られたといわれているが、傘の親骨(フレーム)には鯨の骨や木を使っていた。イタリアで作られた日傘はスペインやポルトガルに広がった。 フランスへは1533年にフィレンツェのメディチ家のカトリーヌがアンリ王子(のちのアンリ2世)に嫁いだときに伝えられたといわれている。17世紀のフランスでは、町中で2階から投げ捨てられる汚物(糞尿)を避けるために女性には傘が必需品だった。 イギリスでは、18世紀頃に現在の構造のものが開発された。傘の開発当初は、太陽から肌を守るため、つまり、日傘として開発され、雨の日は傘をさす習慣がなく濡れていた。ある1人の紳士が雨の日に傘をさし笑われたとも言われている。しかし、時が経ち、その紳士のマネをするようになり次第に雨の日の必須アイテムとなった。当初、雨傘は女性の持ち物とされていたが、1750年、慈善家で旅行家であり、著述家、商人でもあったジョーナス・ハンウェイ(英語版)が雨傘を使用したことをきっかけに男性にも大幅に普及した。彼がペルシャを旅行中に見つけた中国製の傘が雨傘として使われていたのに感激し、これを広めようと思って防水を施した傘をさしてロンドンの町を歩いたという。女性の持ち物とされていた傘を、男性は雨の日には帽子で雨をよけるのが当たり前で雨具として男が傘を使うのはペチコートを着るのと同じことだというほど奇異に思われる時代に、その大胆さは変人扱いを招いたとされる。ところがジョナスが約30年間も手に持ち歩き雨傘として使い続けたことで、イギリスの男たちの目にも次第に傘が見慣れたものとなっていったという。
※この「洋傘の歴史」の解説は、「傘」の解説の一部です。
「洋傘の歴史」を含む「傘」の記事については、「傘」の概要を参照ください。
- 洋傘の歴史のページへのリンク