水死
『陽のあたる場所』(スティーヴンス) 貧しい青年ジョージは、伯父が会社社長として成功したため、その工場に雇われる。彼は女工アリスを妊娠させるが、その一方で、名士の令嬢アンジェラと知り合い恋仲になる。ジョージはアリスを邪魔に思って、湖にボート遊びに連れ出し、突き落として殺そうと考える。しかし決行できないうちにボートが揺れ、2人とも水中に落ちる。ジョージは岸に泳ぎつき、アリスは水死する。裁判で、ジョージには殺意があったと見なされ、彼は電気椅子へ送られる。
*夫が、湖で溺れる妻を見殺しにする→〔宝〕11dの『新月』(木々高太郎)。
*夫が妻を湖で水死させようと考えるだけで、実行はしない→〔空想〕2aの『ロリータ』(ナボコフ)。
★2.夫が妻を水死させようとして果たさず、後にその妻と再会し、ふたたび結婚する。
『今古奇観』第32話「金玉奴棒打薄情郎」 貧乏書生の莫稽は、大金持ちの乞食の親方の娘・玉奴(ぎょくど)と結婚し、親方の財力のおかげで出世する。そうなると莫稽は、玉奴が乞食の娘であることを恥じ、船から川中に突き落とす。玉奴は、莫稽の上司である許公に救われ、事情を知った許公は、莫稽に「我が娘の婿になれ」と言って招く。莫稽は「上役の娘婿になれる」と喜び、花嫁と対面すると、玉奴だったので驚愕する。玉奴は莫稽を「薄情者」とののしるが、怒りを収め、あらためて結婚して、以後は仲むつまじく暮らした。
『英草紙』第2篇「馬場求馬妻を沈めて樋口が婿と成る話」 貧乏浪人馬場求馬は、大金持ちの乞食頭の娘お幸と結婚する。しかし仕官が決まると、求馬はお幸の身分を恥じ、船から湖中へ突き落とす。やがて求馬は家老樋口に目をかけられ、「娘の婿に」と望まれる。婚礼の日、花嫁と対面すると、お幸だったので求馬は驚く。お幸は水死するところを樋口に救われたのであり、彼女は再会した求馬をののしるが、恨みを捨て、あらためて婚儀を行なう。
*男が、刃物で殺したはずの女と再会し、結婚する→〔運命〕1bの『今昔物語集』巻31-3・『続玄怪録』。
★3.夫が妻をボートに乗せて湖を渡る。夫は、往路では妻を水死させようとし、復路では妻を助けようとする。
『サンライズ』(ムルナウ) 村の男に愛人ができ、愛人は男に「妻を殺せ」と勧める。男は妻をボートに乗せて湖を渡り、妻を突き落として水死させようと思いつつ、決行できないまま対岸の町へ着く。おびえる妻の姿を見て男は心を入れ替え、妻に許しを請う。夫婦は和解し、村へ帰る途中、嵐が来てボートは転覆する。男は岸へ泳ぎ着くが、妻は行方不明になる。男は村人たちに助けを求める。村人たちは船を出して妻を捜し、救助する。
『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』序幕「木更津浜辺の場」~3幕目「源氏店妾宅の場」 与三郎は赤間源左衛門の妾お富と密会し、それが知れて全身に刀傷を受ける。お富は海に身を投げるが、和泉屋多左衛門に救われる。3年後。ゆすりたかりをして暮らす身の上となった与三郎は、仲間の蝙蝠安と連れ立ち、多左衛門の妾宅を訪れて小遣い銭を無心する。ところが、そこにいたのは海で死んだはずのお富で、2人は思いがけぬ再会をする。
★5.賊によって水死させられたはずの人物が無事に陸に上がり、賊と対面する。
『日本霊異記』上-7 舟人たちが、三谷寺の弘済禅師の所持する黄金や朱の顔料を奪い、禅師を海に落とし入れる。禅師は、かつて放生した亀に救われて海岸に着く。賊たちは黄金や朱の顔料を三谷寺へ売りに行き、そこに禅師の姿を見出して驚く。
『日本霊異記』下-4 婿が舅の僧を、陸奥へ行く船の上から海に落とし入れるが、僧は『方広経』読誦のおかげで助かる。僧は陸奥へ赴き、婿が舅の法事をしている場にたまたま行き合わせる。対面した婿は恥じ恐れて隠れる。
『博多小女郎波枕』(近松門左衛門)上之巻 毛剃九右衛門一味は、密貿易の現場を見た商人惣七を海へ投げこむ。惣七は伝馬船の中へ落ちて命拾いし、馴染みの遊女小女郎のいる奥田屋へ行く。毛剃一味も奥田屋に上がりこんで豪遊し、思いがけず毛剃と惣七は対面する。
『歴史』(ヘロドトス)巻1-24 竪琴弾きのアリオンは、海上でコリントスの船員たちに金を奪われ、強要されて海に身を投ずる。アリオンは海豚(いるか)に救われ、コリントスのペリアンドロスのもとへ身を寄せる。やがてコリントスに来た船員たちはペリアンドロスに呼び出され、そこでアリオンと対面して仰天する。
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