毒の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/03 03:51 UTC 版)
有毒渦鞭毛藻が産生する主な毒素を示す。個別の記事があるものはそちらも参照のこと。 サキシトキシン (saxitoxin; STX) アルカロイドの一種で、麻痺性貝毒に分類される毒である。分子量299.29、CAS登録番号35523-89-8。1975年に構造が決定された。フグ毒として有名なテトロドトキシンと同様の作用機序を持ち、電位依存性ナトリウムチャネルをブロックして活動電位の発生と伝播を抑制する。熱に対して安定であり、一般的な調理では分解しない。ネオサキシトキシン(neosaxitoxin; nSTX)、ゴニオトキシン(gonyautoxin; GTX)、スルガトキシン(surugatoxin)、プロスルガトコシン(prosurugatoxin)、ネオスルガトキシン(neosurugatoxin)など約30種の誘導体が知られている。 ディノフィシストキシン (dinophysistoxin; DTX) 下痢性貝毒。後述するオカダ酸の誘導体である。分子量は800前後。 オカダ酸 (okadaic acid) 下痢性貝毒に分類されるポリエーテルである。分子量804.9、CAS登録番号78111-17-8。脱リン酸化酵素の活性を阻害することで毒性を示す。摂取したヒトに現れる症状は下痢が主である。副次的な影響として、脱リン酸化が滞ることでリン酸化されたタンパク質が蓄積し、発ガンを促進するという報告もある。 イェッソトキシン (yessotoxin; YTX) 下痢性貝毒に分類されるポリエーテル。経口毒性は低く、毒性を持たない類縁体は規制対象から除外された。 ブレベトキシン (brevetoxin; BTX) 神経性貝毒に分類されるポリエーテル。分子量は900前後、10の異なる誘導体が知られている。麻痺性貝毒とは逆に、ナトリウムチャネルの過度の活性化を促して正常な神経伝達を阻害する。1981年、中西香爾らのグループによって構造が決定された。 パリトキシン (palytoxin) シガテラを引き起こす毒素。名前は最初の分離元であるイワスナギンチャクの属名(Palythoa)に由来する。分子量2680.13の巨大分子で、ナトリウムチャネルに作用して毒性を発揮する。イオン輸送性ATPアーゼに対して特異的作用を持つという報告もある。毒化されるものはアオブダイの他、カワハギ科・モンガラカワハギ科の魚が知られている。 シガトキシン (ciguatoxin; CTX) 後述のマイトトキシンと共に Gambierdiscus toxicus が産生するシガテラ毒の代表。シガトキシンは水溶性、マイトトキシンは脂溶性である。分子量1111、CAS登録番号11050-21-8。ポリエーテルよりなる神経毒であり、作用機序もブレベトキシンと同様ナトリウムチャネルの活性化による。シガトキシンは普通CTX1Bと呼ばれるものを指すが、これが魚類の体内で種々の誘導体に変換され、毒性が増すと言われている。 マイトトキシン (maitotoxin; MTX) シガテラを引き起こす毒素。分子量3422、CAS登録番号59392-53-9。生体高分子以外では既知の最大の生体分子である。構造は1996年に決定された。マイトトキシンは細胞膜のカルシウムチャネルに作用し、カルシウムイオンの透過性を上昇させる。細胞内のカルシウムイオンはトロポニン等を介して筋肉を収縮させる役目を担っており、この濃度勾配が撹乱されると筋肉の異常収縮が起きる。海産の毒素としては最も毒性が高い部類に含まれる。 ペクテノトキシン (pectenotoxin; PTX) ホタテガイ(Patinopecten yessoensis)から単離され、その名が付けられた毒素。渦鞭毛藻が産生した後、これを摂取した貝の中でペクテノトキシン2-セコ酸など幾つかの誘導体に変換される。アクチンの脱重合作用を持つほか、ヒトに対しては肝臓毒性を示す。 アザスピロ酸(azaspiracid; AZA) 1995年に同定された下痢性貝毒。環状アミンを含むポリエーテルである。同年にオランダで食中毒が発生し、これがアイルランド北西岸のキラリー湾産のイガイ類によるものであったことから発見された。1997年・2001年などその後もアイルランドを中心にヨーロッパで被害が報告されている。
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