死後追悼とは? わかりやすく解説

死後・追悼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 03:58 UTC 版)

加藤道夫」の記事における「死後・追悼」の解説

友人だった加藤について三島は、「私は何の誇張もなしに云ふが、生れてから加藤氏ほど心のきれいな人見たとがない」と述べ、「心やさしい詩人は、『理想劇場存在する国』へと旅立つた」と哀悼している。 ともあれなよたけ」を残して死んだ加藤道夫は、「モオヌの大将」を残して死んだアラン・フウルニエを想起させる。共に完璧な青春遺書であり、不朽の青春証しである。しかしフウルニエは幸ひにして戦場死んだが、加藤氏戦後おぞましい現実立ち会ひ、第二幕で、子供たち虐待のざんげをきいて放つなよたけの叫びのやうに、「まあ、むごたらしい!……そんなことをするから、後の世の人達が食べなくてもいいものまで食べるやうになつてしまふ」その「後の世」に立会ふといふ不幸を、閲しなければならなかつた。かくてこの人嗜食末世は、一人心美し詩人を、喰べてしまつたのである。 — 三島由紀夫加藤道夫氏のこと」 同じく友人で、加藤勧められその後カトリック傾倒した矢代静一は、加藤が死の前に鬱病ぎみになってたとする中村真一郎仮説鑑みながら、以下のように語っている。 いまとなっては確かめるすべもないが、その病いが、彼を病的にリゴリスト厳格主義者)に仕立てあげ、その結果として、自分には神の御許に行く資格なしと、自己判断下してしまったのではないか。私が、加藤の死から十年ほどたって、神に向ってその目を挙げたのは、加藤がくれたあの「カトリック入門書」の中の一節が目にとまったからであった。「自殺最大罪悪である」 加藤は、この一節に、わざわざ定規をあてて線を引いていた。 — 矢代静一旗手たちの青春――あの頃加藤道夫三島由紀夫芥川比呂志福永武彦は、加藤自殺衝撃を受け、『夜の三部作』を執筆した語っている。 加藤処女作であり代表作の『なよたけ』がノーカットで完全上演されたのは加藤死後になったからのことで、1955年昭和30年9月に、加藤念願であった文学座により、大阪毎日会館芥川比呂志演出行われた三島は、「彼の生前にこれを上演しなかつた劇壇といふところは、残酷なところだ」と批判しながら、もしも加藤生前に『なよたけ』が完全上演されていれば、「彼を死から救つたかもしれない」としている。 芝居仕事悲劇は、この世でもつとも清純なけがれのない心が、一度芝居理想向けられると、必ずひどい目会ふのがオチだといふことである。(中略)(加藤)氏があれほど上演待ちわびた代表作なよたけ」さえ、文学座によつて完全上演されたのは氏の死後であり、生前の氏は、いつも不安と不満におびやかされながら、ジロオドオへの至純あこがれと、宝石のやうな演劇の夢を、心に抱きつづけた青年であつた。 — 三島由紀夫私の遍歴時代加藤の死を痛惜していた岸田国士は、その2か月半後、演出作『どん底』(原作マクシム・ゴーリキー)の舞台稽古中に脳軟化症再発して倒れ急逝した岸田加藤追悼して次のような言葉を残していた。 彼のやうな死に方をした作家の誰よりも、彼は、この世残した仕事の量だけについていへば、おそらく非常に少いに違ひない。そのことまた、一方からいへば、彼ぐらゐ未来へ仕事豊かに残して去つたものはないといへるのではあるまいか。こんなことを、私はたゞ気安めの繰り言として言つてゐるのではない。今迄、彼と一緒に芝居仕事をしてゐた人々の心のなかに、新劇楽屋稽古場一隅でぢつと腕組みをして立つてゐる彼の物言ひたげな姿は、おそらく、長い年月の間、生きつゞけることと、私は信じる。それはどこか、予言者めいた、配役の妙を思はせる姿ですらあつた。 — 岸田国士加藤道夫の死」

※この「死後・追悼」の解説は、「加藤道夫」の解説の一部です。
「死後・追悼」を含む「加藤道夫」の記事については、「加藤道夫」の概要を参照ください。

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