死後の驚くべき発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/05 05:56 UTC 版)
「ヘンリー・ダーガー」の記事における「死後の驚くべき発見」の解説
ネイサン・ラーナーに持ち物の処分を問われた時、ダーガーは「Throw away(捨ててくれ)」と答えたとされる。ダーガーの死後、部屋の片付けに入った大家ネイサンが目にしたのは、40年分のごみとジャンクの集積だった。十字架、壊れたおもちゃ、テープで張り合わせたいくつもの眼鏡、左右不揃いのボロ靴、旧式の蓄音機にレコードの山。紐で束ねた新聞や雑誌の束は天井に届くほどに積み上げられ、床には消化薬の空ビンが転がっていた。 トラック二台分のゴミを捨てた後、ネイサンはダーガーの旅行鞄の中から奇妙なものを発見した。花模様の表紙に金色の文字で『非現実の王国で』と題名が記された。原稿15冊(全てタイプライターで清書され、7冊は製本済み、8冊は未製本)だった。さらに物語を図解する絵を綴じた巨大画集が3冊。数百枚の絵には3メートルを超える長いものもあり、粗悪な紙の面と裏、両面に描かれていた。ヘンリー・ダーガーの秘密のライフワークだった。 身寄りのない下宿人が残した迷惑なゴミ。普通の大家だったら捨ててしまうに違いない奇妙な代物に、稀有な芸術的価値を見抜いたのは大家ネイサンの眼だった。 ネイサン・ラーナーは1913年生まれ。シカゴ・バウハウス派の写真家で、優れた工業デザイナーだった。第二次世界大戦中は海軍で照明やカモフラージュのコンサルタントを務め、戦後は家具や日用品、玩具のデザインに携わり、イリノイ工科大学でデザインの教師も務めた。 ダーガーの遺作の偶発的発見者となったネイサンは、著作と絵、そして部屋を4半世紀にわたって保存し、美術関係者や研究者を招き入れて、1997年に亡くなるまでダーガーのライフワークの真価を問い続けた。 作品が人々の目に触れるようになると、孤独な男が記したファンタジーが人々の心を揺さぶった。 2001年には全著作と挿絵26点の収蔵に伴い、アメリカン・フォーク・アート美術館に<ヘンリー・ダーガー・スタディー・センター>が開設され、研究が本格化した。2012年にはニューヨーク近代美術館とパリ市立近代美術館にまとまった数の作品が所蔵された。なおダーガーの部屋は2000年に取り壊されている。
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