武器開発に与えた影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 01:44 UTC 版)
「プレートアーマー」の記事における「武器開発に与えた影響」の解説
プレートアーマーの発展はそれに対抗する武器の発展にも影響を与えた。 この鎧は刃を通さず、打撃(特に切断)に強かった。ロングボウや強力なクロスボウ、銃器であれば装甲を貫通できたが、一般的なクロスボウでは、撃った後に次の矢をつがえるか、反撃から逃れることができるような遠距離から2mmの厚さの鉄板でできた装甲を貫くエネルギーを得ることは容易ではなかった。このためクロスボウは次第に強力化していき、短く太い専用の矢を使うものが利用されるようになっていった。これによって狙撃された騎士も少なくないことから、十分な威力を持つクロスボウはプレートアーマーを着た騎士の脅威として、その使用が制限されるなどの歴史も見られる。詳しくはクロスボウの項を参照。 その一方で戦斧やメイス、ウォーハンマー(戦槌)、フレイル等による殴打は装甲そのものを破壊することこそできなかったが、十分な重さと勢いを与えることで大きく陥没させることはあり、その衝撃によって人体に打撲傷を与えることができた。特に重いものでは骨折したり裂傷を負ったりもしたため、鎧の下に打撃を吸収するキルティングの下地をつける場合もある。モーニングスターのように打撃力と貫通力を持つ武器が発達したりもしている。片手半剣や両手剣による攻撃は装甲を斬り裂くことはできなかったが、打撃でダメージを与えることはできた。 プレートを全身に身につけるとしても、関節の可動域を確保するためにはどうしても隙間が発生することは避けられず、剣や短剣を用いてその隙間を狙う技術が発展し、これに対抗するために戦士達は鎧の下に更に鎖帷子をシャツのように着込んだ。こうした目的の鎖帷子では布地のシャツに関節部分だけ鎖が縫い付けてあるものも登場している。また、鎧のつなぎ目や鎖帷子の隙間を狙う刺突に特化した剣や短剣、槍(アールシェピースやオウルパイク)が誕生した。 この他には棒状武器の中に「引っ掛けて引き倒す」という機能に特化したものも多い。これは比較的軽装の歩兵などが装備し、あまりに鎧が重くなったために落馬すると自力ではすぐさま馬に這い上がれない騎士などに対して利用された。ハルバードなどは、その典型的な「引っ掛けて打ち倒す」ことを前提とした武器である。これらで引き倒された騎士は歩兵などに群がられ、倒れたところを鎧と兜の隙間から短剣を刺し入れられて倒されたという。 ウォーピックやウォーハンマー、ハルバードやポールアックスのピック部分も装甲を貫く役目を果たした。 14世紀頃の西洋では鎧の発達で盾は不要になり、騎士は両手剣、両手斧、ポールアックス、ポールハンマー(長柄のウォーハンマー)などの両手用の威力のある武器を使用するようになった。 一般の兵士も槍先が重くなって、柄が長く頑丈になり、鎧を突刺すべく改造された槍や板金鎧に有効なハルバード、ビル、グレイブといった両手持ちの歩兵用のポールアームを使用するようになった。 プレートアーマーの衰退もまた武器の発展に影響を与えた。16−17世紀に用いられたレイピアは、プレートアーマーの衰退後に生まれた武器であり、鎧で防御していない敵を攻撃すると同時に、鎧で守られていない自らを護るものでもあり、扱い易さを重視した軽量の剣である。レイピアは戦場でも使われたが、どちらかと言えば決闘での使用が重視された。 東欧においては17世紀になっても未だにチェーンメイルやプレートアーマーを使用する兵士がいたため、エストックや戦斧、メイスやウォーハンマーが用いられた。 しかし、鎖帷子の上にコートオブプレートを着込んだスタイル、およびプレートアーマーの重装備には、斬撃だけではなく、打撃もほぼ通用せず、刺突が有効だとする説もある。
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