定量的構造活性相関
(構造活性相関 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/20 06:04 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動定量的構造活性相関(ていりょうてきこうぞうかっせいそうかん)は化学物質の構造と生物学的(薬学的あるいは毒性学的)な活性との間になりたつ量的関係のこと。これにより構造的に類似した化合物の「薬効」について予測することを目的とする。QSAR(=Quantitative Structure-Activity(またはAffinity) Relationshipの略)と呼ばれることもある。QSARを英語では「クェイサー」、日本語では「キューサー」と発音することが多い。
それに対し化学構造と物理的性質との関係を定量的構造物性相関(QSPR、Quantitative Structure-Property Relationship)という。両者は密接な関係があり方法論的にも共通する部分が多い。 コーウィン・ハンシュによって研究が始められ、1964年にハンシュと藤田稔夫が発表した方法(ハンシュ-藤田法)が代表的な方法として知られる。
方法としては、化合物の疎水性、対象とする化合物の構造を表現する数量(幾何学的構造を表す記述子、HOMOやLUMO(フロンティア軌道理論参照)のエネルギー、あるいはハメットの置換基定数、電気陰性度といった電子的記述子など)を抽出し、構造的に類似する一連の物質に関してこれら数量と活性との関係を統計学的に(回帰分析などを用い)検討する。
なお、記述子としては化合物に関するパラメタを使用しているが、基本的には薬物標的分子と化合物との相互作用を前提とした手法であり、実際に定量的構造活性相関研究の結果から薬物標的-化合物間の相互作用様式を推定するといった使用法もしばしば見られる。
計算化学の一部門であり、方法的には計算機化学ということができる。
関連事項
構造活性相関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 04:11 UTC 版)
サール社の研究グループは、COX-2を十分に阻害するには適切に置換された2つの芳香環が中心環付近に位置していなければならないことを発見した。セレコキシブの構造活性相関を推定するにあたり1,5-ジアリルピラゾール部分にさまざまな修飾を施すことが可能である。ピラゾール1位にあるパラ-スルファモイルフェニル基は、パラ-メトキシフェニル基よりもCOX-2を選択的に阻害することが分かった(Compound[化合物]1-3を参照)。さらに、COX-2を阻害するには4-(メチルスルフォニル)フェニル基か4-スルファモイルフェニル基が必要なことも知られている(Compound 2-4を参照)。例えば、これらのいずれかを–SO2NHCH3置換基に置きかえると、非常に高い50%阻害濃度が認められ、COX-2の阻害活性は減少する(Compound 5を参照)。また、トリフルオロメチル基やジフルオロメチル基が、ピラゾール3位に導入された場合、フルオロメチル基やメチル基よりも優れた選択性と阻害力を発揮する(Compound 6、7、8、9を参照)。 ピラゾールの4位は立体障害により大きく影響を受ける。すなわち、置換基のかさ高さが増大するほど阻害能は減少する。例えば、R1基の大きさをメチル基からプロピル基にまで徐々に拡大した場合、エチル基以上の大きさの置換基を有するとCOX-2阻害力が減少した(Compound 12、13、14を参照)。さらに、この位置にハロゲン原子を組み込むことでCOX-2阻害力が非常に大きくなる(Compound 15、16を参照)。ピラゾールの5位には芳香環が必要であることが知られているが、その柔軟性により、どういった修飾の組み合わせにより最大の阻害能と選択性が得られるかは不明であるため、この置換基の最適化は困難である。メタ部位(3-置換)と比較してパラ部位(4-置換)やオーソ部位(2-置換)での置換は力価が高くなることがわかっている(Compound 17、18、19を参照)。 これらの位置に-CN等の電子吸引基を有する場合は、COX-1およびCOX-2の阻害力が弱い。また、メトキシル等の電子供与基はCOX-1およびCOX-2のいずれも強力に阻害してしまうため、COX-2選択的阻害剤としては不十分である(Compound 20、21を参照)。パラ-メトキシ基の強力なCOX-1阻害力はα位でハロゲン原子を置換することにより軽減することができる。例えば、3-フルオロ基や3-クロロ基の導入によりCOX-1阻害作用がそれぞれ43倍および33倍減少する(Compound 22、23を参照)。5位の芳香環のパラ置換基により創出される立体障害を考慮することが必要である。パラ位のメチル化および4-エチル化によるCOX-2阻害力を考えた場合、メチル化した場合は50%阻害濃度が0.040μMでCOX-2を阻害することができるが、一方エチル化した場合では0.86μMであり、これはパラメチル置換基の阻害力が少なくとも20倍高いことを意味している(Compound 10、11を参照)。 Compound 10がセレコキシブである。COX-2の阻害にはピラゾール環の1位に4-スルファモイルフェニル基が必要であり、また、ピラゾール環5位の4-メチルフェニル基は阻害力を最大にするうえでの立体障害が低い一方、3位のトリフルオロメチルグループはより優れた選択性と阻害力を有する。セレコキシブの選択性を説明するには、薬物分子とCOX-1およびCOX-2酵素の結合差の自由エネルギーを解析しなければならない。構造の最適化は、シクロオキシゲナーゼの523番目のサイドポケット部位(COX-1ではイソロイシン、COX-2ではバリン)への結合が重要であることを見出した。この(523番目のアミノ酸の)変異は、セレコキシブ‐COX-1複合体を不安定化するようなスルホンアミド基の酸素とイソロイシンのメチル基の間の立体障害を作り出すことにより、COX-2選択性に寄与することが明らかとなった。従って、COX-2選択的阻害剤は非選択的NSAIDsよりも立体構造がかさ高いと考えるのが妥当である。
※この「構造活性相関」の解説は、「セレコキシブ」の解説の一部です。
「構造活性相関」を含む「セレコキシブ」の記事については、「セレコキシブ」の概要を参照ください。
構造活性相関と同じ種類の言葉
- 構造活性相関のページへのリンク