森功・田中森一の意見
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ジャーナリスト・森功の著書「ヤメ検―司法エリートが利欲に転ぶとき」や、「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」の著者田中森一によると、検事の世界はムラ社会と称されるほど狭く、現役検事と検察OB、検察組織内や学閥での先輩・後輩、かつての上司・部下の垣根が極めて低い。このため法廷で対決するヤメ検と現役検事が、同僚検事時代の関係のままに付き合いを続け、気脈を通じることが珍しくない。故に容疑者を有罪に持ち込みたい検事と、依頼人の罪を軽くしたいヤメ検が妥協することにより、判決の「落とし所」を探るような裁判の結末を作り出してしまうという。そのような関係から脱して全面対決に持ち込もうとしても、検察の手法を知り尽くしたヤメ検が捜査の穴を突くため、思うように法廷戦術・捜査手法を発揮できなくなることも多い。 ヤメ検は弁護士という立場上、依頼人の利益のために動く。弁護士が国家権力を監視・チェックする機能自体は責められることではないが、上記のような「落とし所を探る」妥協や、有力OBとしての発言力や存在感が検察の捜査を自粛させてしまうこともある。中田カウスによる吉本興業恐喝疑惑は強制捜査寸前にまで証拠固めが進んだものの、福岡高検、大阪地検OBの大物ヤメ検・加納駿亮の影響力によって実現に至らなかったと言われる。 ヤメ検への依頼人はまさにそのような関係を利用した法廷戦術で、罪責が軽くなることを期待して弁護を依頼する。その中には暴力団関係者やフロント企業、不正を行っている組織、各界の黒幕など、闇社会の怪人物が当然のように存在する。彼らが有力ヤメ検に殺到し、顧問への就任・弁護依頼の名の元に大金の顧問契約料と甘い話を持ち込んでくる。その過程で地下社会との交流や美味い話に「面白さ」を感じ、それらに飛びつくことで次第に闇社会の怪人物たちに利用され、最後は不正・犯罪と同化し、闇社会に取り込まれていってしまうヤメ検もいる。田中森一はそのような関係すら隠さずにいたため、「闇社会の守護神」と呼ばれるに至った。 その背景には、いわゆるエスタブリッシュメントとマフィアが渾然一体となって重要な意思決定を成してきた日本社会の構造があり、このような「真の社会構造」を目の当たりにすることに、ヤメ検が魅せられてしまうと田中森一は説く。森功は前掲書で朝鮮総連本部ビル売却問題に関わった緒方重威や、女性問題で検察庁を追われた則定衛などをその例として指摘し、「かつて人を疑うことを仕事としていた人物が意外と騙されやすく、脇が甘い。自分を嵌めようとする奴などいるはずがないという思い込みに司法エリートの限界がある」と分析する。 現役検事とヤメ検が妥協を繰り返す中、「ヤメ検によって捜査が妨害された。事件が潰された」と感じる現役検事も少なくない。これらの恨みが募った結果、ヤメ検が「国策捜査」の対象とされ、逮捕に至る事例もある。石橋産業事件で逮捕された田中森一がその例である。 また、「落とし所」を探る妥協や現役検事・ヤメ検間の低い垣根の中で、両者が癒着することもある。元大阪高検幹部の三井環は、検察の裏金作りとその裏金の恩恵に浸かっていたヤメ検を内部告発しようとしたが、テレビ番組の取材を受ける当日に微罪逮捕された。現役検事とヤメ検の癒着による、口封じのための国策捜査と言われている。 このような検察とヤメ検の関係の中、最大の利益を得ているのは、ヤメ検に弁護を依頼する犯罪容疑者、不正を行った企業、あるいは暴力団関係者など闇社会の住人である。世間の耳目を集めるような大事件では必ずと言っていいほどヤメ検が弁護に関わり、検察と容疑者の「落とし所」を探る。あるいはヤメ検が捜査・法廷戦術の穴を突くことで、裁判でも事件の真相が明らかにならず、うやむやのままに裁判が終わり、容疑者の罪だけが軽くなるという結果が残ってしまう。
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