映画の表現規制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 06:13 UTC 版)
「刃物を持たない運動」の記事における「映画の表現規制」の解説
「刃物を持たない運動」の排除の対象は現実の刃物に留まらず、創作物にも及んだ。運動開始当初に中央青少年問題協議会が策定した運動趣旨も「有害映画、放送、出版物およびがん具刃物等を排除するため、次の措置を講ずることが望ましいこと」という項目が立てられ、「殺人、暴行等の場面を刺激的に描写し、青少年に刃物等を持つことを模倣させ、または人命軽視の傾向を生むようなおそれのある映画、テレビおよびラジオ放送、紙芝居、マンガその他の出版物等を排除するよう関係業者の協力を求めること」「青少年に有害な刃物、がん具等を排除するため製作、販売業者の協力を求めること」の2点を挙げている。 前述の八大都道府県防犯部長会議会議では「テレビの危険な番組」を調査した結果「刺激的な番組」「殺人の場面」がいかに多かったかが報告され、今後中央青少年問題協議会が中心となり、各テレビ局や映倫に「自粛」を申し入れることが決められた。また熱心に運動を推進した婦人団体の内、大阪の婦人団体は「"殺人"などのきわどい場面を放送している民間テレビのスポンサーに対し"ハガキ戦術"を展開 "不買宣告"を行うことを検討している」と報道されている。 12月13日の夜、映倫管理委員会は日活・東映・大映・松竹・東宝の6社の映画製作担当重役と協議を行い、暴力追放のみならず「刃物を持たない運動」にも全面協力することを取り決め、14日に発表している。ここでは「人命尊重」の立場から、「たとえ正義のための暴力行使であっても、殺人や刀による解決、悪の生態、殺人描写が過剰にならないようにする」「『殺し屋』的な人間が場面に横行したり、殺人描写が刺激的にならないように気をつける」「刃物、ピストルなどの腕前を競うような描写を避ける」「乱射、乱撃などの影響についても十分留意する」ことが決められた。 日本放送協会(NHK)でも「刃物を持たない運動」への協力として、1960年(昭和35年)秋から、テレビ番組では刃物などによる露骨な殺傷シーンは一切描写しないことを決定している。 こうして「刃物を持たない運動」は映画制作に大きな影響を及ぼすこととなり、松竹の映画『悪の華』は幾つかの殺しの手口を見せ場にする予定であったのが、撮影済のフィルムの多くをカットして上映されることとなった。東映の『警視庁物語』シリーズの映画『警視庁物語 不在証明』や『警視庁物語 十五才の女』では、「刃物を持たない運動」の横断幕やポスターが何度も画面に登場している。また、東宝の『情無用の罠』ではシナリオに急遽変更が加えられ、殺人の濡れ衣を着せられた登場人物がピストルで相手を撃つという場面で、武器がスパナに変えられた上、直前に飛び出してきた刑事が「あとは警察にまかせろ」と攻撃を阻止する、というものに変更された。
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