映画における不気味の谷現象
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「不気味の谷現象」の記事における「映画における不気味の谷現象」の解説
この原理はコンピュータ動画のキャラクターに適用されるようになった。アメリカの映画評論家ロジャー・イーバートは、映画中の人間に類する生物のメーキャップと衣装について不気味の谷の概念を適用した。 不気味の谷はコンピュータ動画のキャラクターを作るときの難しさの原因であると考えられた。コンピュータ動画を使った映画を批評するとき、ある映画に対する嫌悪感を説明するためにときどき不気味の谷が言及される。この原則によると、人間に良い感情を抱かせるためには、不気味の谷に落ちないように、登場人物には人間的な特徴をより少なくしたほうがよいという結論になる。 Tin Toy この作品に登場する赤ん坊は完全にコンピュータによって作成されており、人間っぽく見えない。この効果はそのキャラクターが2次元的であることによって軽減されているが、過度に細かく描写されたしわと、唾液の(比較的)初歩的なレンダリングのために、キャラクターは邪悪か、さもなくば非現実的に見える。 ファイナルファンタジー スクウェア・ピクチャーズの2001年の映画「ファイナルファンタジー」は興行的に失敗し、そしてしばしば不気味の谷の犠牲者として引用される。この映画は写実的リアリズムのキャラクターを呼び物にした初の本格的CGI映画である。キャラクターは、目に見えるような汗をまったくかかないし、目と唇の動きは「奇怪」に見える。 ロード・オブ・ザ・リング コンピュータアニメーションにおいて、それらしい人間の動きを実現し不気味の谷を「跳び越える」最も良い方法は、モーションキャプチャとキーフレーム法の両方が融合された方法であると言われている。前者は広く用いられる技術になったが、キーフレーム法はアニメーション産業全体でまだ広く使われている。 J・R・R・トールキンの「指輪物語」を翻案した映画ロード・オブ・ザ・リングシリーズにはゴラムというキャラクターが登場し、この2つのテクニックを融合させて衝撃的な効果を得た(ただし、ゴラムの目と顔はキーフレーム法のみが使用された)。また、ゴラムのアニメーションには(皮膚のきめと唇の周りの唾液のような効果を含めて)キャラクターの外観が不気味の谷の反対側に達するほどの先進的なモデリングが用いられていた。しかし、ゴラムに関しての1つの明白な事実は、人物が明らかに人間でない、そして初めから意図して不気味に作られている場合、同じ技法を使って形作られたとしても、人間の姿によって引き起こされるのと同じ反応を必ずしも引き起こさないということである。 アニマトリックス CGアニメーション「アニマトリックス」中の「ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス」も同じく不気味の谷の犠牲になった。これは「ファイナルファンタジー」と同じ技術で製作されたもので、ある意味不気味になることを狙っていた。「ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス」で登場するような不気味の谷の特徴を持っているキャラクターのエロチックな映像は、「性的に興奮させる」「人外である」という矛盾するメッセージを与えるために、特に不安を感じさせる。 A.I. 不気味の谷はロボティックスを扱った映画の筋として用いられることもある。「A.I.」は新型のアンドロイドがリアルに作られていることに多くの人々が不安を感じている未来世界を描いている。例えば、「肉体祭り」と呼ばれるロボット破壊競技を見て大喜びする騒々しい群衆が、次の引き裂かれる対象がリアルな少年のロボットであると、急に愛らしい人間のように思われて静まり返る。 アイ,ロボット 「アイ,ロボット」では、USロボティックス社の最新型ロボットは表情と外観がよりいっそう人間に類似している。これが、旧型の箱型金属ロボットに悩ませられていた主人公デル・スプーナをより不安にさせる。「なぜ彼らに顔を付けた?」彼は一面に並ぶまったく同じ外見の新型ロボットを凝視しながらロボットのプログラマーの1人に尋ねる。そして彼は拳銃を至近距離からロボットの「顔面」に発砲、撃ち壊すのだが、それは、彼が「人間」を「処刑」する光景に息をのむであろう映画の観客に、彼の不安が正しいことを効果的に表す。
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