操砲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 21:48 UTC 版)
保式機関砲は三脚上に乗せられて操砲された。三脚は二本の前脚と一本の後脚から構成され、機関砲手はこの後脚上に設けられたサドル(鞍座)に腰かけて射撃操作を行った。 三脚架付きの保式機関砲は、砲車長1名、砲手3名の班で運用された。砲車長は砲の右側に位置する。一番砲手は三脚架上のサドルに乗り、機関砲を照準、射撃する。二番砲手は砲の左側に位置し、挿弾子の装填を行う。装填・排莢のガス圧に注意し、規制子を操作する。三番砲手は後方に位置し、弾薬箱から弾薬を供給する。 機関砲を移動するには砲手2人で移動させた。三脚の前脚を2番砲手が背負い、後脚を一番砲手が持つ。砲車長の号令に合わせて機関砲を移動させた。三脚は折り畳むことができた。一箱十数㎏ある弾薬は、三番砲手が持ち運んだ。弾薬箱内には弾薬紙箱14個、420発分が入れられていた。紙箱には実包30発を入れた挿弾子がおさめられており、全重は890gである。 単発射撃には砲車長が射程と目標を指示し、「並ニ打カカレ」と号令した。連続射撃には砲車長が射程と目標を指示し、「急キ打カカレ」と号令した。密集部隊、大目標に対して薙射する場合、「左右ニナゲ」と指示した。二番砲手は、機関砲がクリップの3分の2程度を撃ち終えたときに次のクリップを用意し、撃ち終えると直ちに装填した。保弾板の回収は時間のあるときに三番砲手が行った。 保式機関砲は作動にガス圧を用いる。このガス圧を調整する規制子(レギュレーター)が作られていた。ガス圧が過小で排莢不十分、または排莢されないときには規制子を締め、ガス圧の反動が過大で銃が安定しない場合、肩に反動を感じる場合には規制子を緩めて調整した。 保式機関砲は単発時に連射されることがあった。これは射手の熟練の問題ではなく、逆鉤が引き金にかからない異常が原因である。これは復座バネの異常か、ガス規制子の調整が不適なため、ガスピストンの後退不十分なためであった。ガスピストンやボルトの各部に錆、塗油の乾燥物、薬莢の削り屑、燃焼物の残滓などが付着してもこの現象が起こった。ほかに引き金、逆鉤の磨滅や異常なども原因となった。これらの処置として、引き金を前方へ押し戻すか、コッキングレバーを保持してガスピストンの運動を阻止する必要があった。 雷管不発時にはコッキングレバーを引き、ボルトを後方へ引いて不発弾を抜弾した。実包が薬室孔と正対せず、弾頭が薬室ブロックに衝突し装填不完全となることがあった。これは保弾板の変形などが原因となった。ほかに、保弾板が変形し、装填架に入らないことがあった。装弾歯輪とボルトとの摩擦にも原因があった。射撃時、実包の雷管が後方へ抜けだしたときには、異音とともに後方へ火煙が吹き出た。これが続発するときは撃茎が長すぎるか短すぎ、または撃針の変形が考えられた。 点検整備にあたり、機関砲の分解は必要な部分のみにとどめられた。分解・結合法に示されている項目以外の部品の分解は禁止された。金属部分に錆を生じた場合、石油を注いで浸透するのを待ち、油を含ませた布で軽く摩擦し、さらに乾いた布で除去した。油が消えるまで強くこすることは禁止された。白色部分は柔らかい木片、剛毛のハケを使用できた。錆を除去するため、磨き砂、摩研紙、粘土、砂礫などを用いることは厳禁された。 点検用の油脂には以下のものを用いた。 石油、拭浄用 機械油 防錆用 鯨油 革具用 鉱脂 摩擦部分の防擦用・防錆用 硬防擦脂 車軸用
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