抗体医薬品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/07 14:08 UTC 版)
抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体が作成可能になり、ヒト化抗体、ヒト抗体が開発されるに至って、現在では非常に多くの抗体医薬品が臨床で用いられている。抗体医薬品の種類にはマウス抗体に加えて、マウス抗体の定常領域をヒト型に変えたキメラ抗体、超可変領域だけがマウス由来のヒト化抗体、さらに遺伝子組換えマウスを用いて作成される完全ヒト化抗体がある。分子量150,000の全長のIgG抗体に加えて、定常領域(Fc)を除いたF(ab)’2やFab、可変領域のみを短いリンカーで連結した一本鎖抗体(scFv)などの構造的特徴の異なる抗体分子も抗体工学技術の進歩により開発されている。こうした構造改変により分子量が大きく変わることから体内動態は大きく変動する。抗体医薬品は高分子医薬品の中でも標的に対する選択性の高く体内で安定という特長がある。それゆえに抗体医薬品をもとにした多機能高分子医薬品が次々と開発されている。抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate)としてはカドサイラやゲムツズマブ オゾガマイシンなどで知られている。IgG融合蛋白質医薬品としてはエタネルセプトが有名である。また2種類の抗原部位を持つ二重特異性抗体(bispecific抗体)も開発されており、多様な機能性をもつ抗体医薬として開発が進められている。二重特異性抗体としてはエルツマキソマブなどが知られている。抗体医薬の作用は以下の5つが知られている。 抗体依存性細胞障害作用 抗体依存性細胞障害作用(antibody-dependent cellular cytotoxicity、ADCC)では標的細胞表面の抗原に結合した抗体のFc領域を介してナチュラルキラー細胞や単球が集簇し、細胞から産出される細胞障害性メディエーターを介してがん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する。 補体依存性細胞障害作用 補体依存性細胞障害作用(complement-dependent cytotoxicity、CDC)では標的細胞表面の抗原に抗体が結合すると、抗体のFc領域に補体が結合し、連鎖的な補体の活性化反応が細胞表面で起こることで細胞を破壊する。 標的分子の中和 抗体がリガンドあるいは受容体に特異的に結合すると細胞内へのシグナルが遮断される。これにより標的分子の作用が中和する(阻害される)ことで効果を発揮する。 アゴニスト作用 細胞表面のレセプターに結合し、アゴニストと同様シグナル伝達を活性化する。 ドラッグデリバリー作用 薬物に抗体をコンジュゲートすることで抗体を細胞選択的送達にもちいることができる。これを抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)という。
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抗体医薬品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 06:57 UTC 版)
血清療法(1901年にベーリング らがウサギから取り出した破傷風菌の抗体の発見から、感染症の治療に抗毒素を含む血清を用いることを提唱した=血清療法)に起源をもち、その後抗体医薬とよばれる血清中から抗体のみ分離した免疫グロブリン製剤(第一世代抗体医薬品)が開発された。この製剤は免疫学的なメカニズムでがんを治療するところは血清療法と同じで、抗体の結合数が少ないと効果が薄かった。 その後に、ハイブリドーマ技術の開発によりモノクローナル抗体を血清を使わずに簡単に製造が可能となり(第二世代抗体医薬品)ようやく、抗体にアイソトープを結合させてがんの治療効果を高めることに成功したが、副作用が重く、しかも製薬のコスト面にも大きな問題がある。 分子量50万から70万のタンパク質であり細胞膜表面の受容体の細胞外に出ている突起などに作用する(細胞内には入れない)。ADCC活性(抗原抗体反応+NK細胞で標的化)、CDC活性(抗原抗体反応+補体の活性化でがん細胞のアポトーシスを促す)。ほとんどが、生体防御に寄与するタンパク質の免疫グロブリンによるADCCの活性化。
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