打ち出の小槌とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 言葉 > 表現 > 打ち出 > 打ち出の小槌の意味・解説 

うちで‐の‐こづち【打(ち)出の小×槌】

読み方:うちでのこづち

それを振ればなんでも思いどおりの物が出てくるという小さな


打ち出の小槌

作者眉村卓

収載図書日がわり一話 第2集
出版社出版芸術社
刊行年月1998.9


打ち出の小槌

作者星新一

収載図書星新一ショートショートセレクション 12 盗賊会社
出版社理論社
刊行年月2003.9


うちでのこづち

(打ち出の小槌 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/05 05:37 UTC 版)

大黒の打出の小槌とその使いの鼠を描いた摺物岳亭春信

うちでのこづち(打ち出の小槌、打出の小槌)は、振ることにより様々なものが出てくるとされる伝説上の(つち)。日本説話昔話に登場している宝物のひとつである。の持つ宝物であるとされるほか、大黒天(だいこくてん)の持ち物であるともいわれ、富をもたらす象徴として描かれている。 かがえられ、説話や物語などに見られる鬼の登場する物語がその原典であろうことが考察されている[1]

概要

欲しいもの、願い事を唱えて振ると願いどおりの物があらわれる効果を持つ。隠れ蓑、隠れ笠と並び称されており、福を招く宝物であるとされる。「ものを出す槌」の伝承はインドにある物が古いことからインドからモンゴル、朝鮮を経て日本へ伝わったと考えられる[2]。一例として、『酉陽雑俎』に収録される『こぶとりじいさん』の原型に登場する。

御伽草子
室町時代に書かれた『御伽草子』のひとつである『一寸法師』では、姫を襲った鬼がこのうちでのこづちを所持しており、一寸法師によって退治された際にこれを落としてゆく。一寸法師は姫に「大きくなれ」とこづちを振ってもらって体を大きくしてもらい、立派な武士として身を立てる結末となっている[3]
現在、一般に流布している昔話としての一寸法師でも、同様にうちでのこづちが一寸法師を大きくするために使われる面が大きくあつかわれているが、『御伽草子』では背を大きくしたり、金銀を出したりする以外に、鬼を退治したあとの疲れをとるために次々とおいしそうなを出すなどの効果も発揮しており[3]、その用途は幅広い。
宝物集
平安時代末期[注 1]の仏教書『宝物集』には、打ち出の小槌は宝物だけではなく牛や馬、食物や衣服など心のままにすべて出現させる事が出来るが、打ち出した物はまたこれすべての音を聞くと失せ果せる物であり、結局は現世に実在する宝物と言えるべきものではないという内容の説話を収録している[4][5]
大黒天の持ち物
うちでのこづちは、日本において大国主(おおくにぬし)の神と同一視されるようになった大黒天の持ち物であるといわれ、大黒天像は槌を持った姿で製作されることが多い[6][7]。しかし、どのような記述によって大黒天が槌を持つ姿が製作されるようになったのかは明確ではない[7]
なお、東洋史家の宮崎市定は、中国で古くを打って音を出して人を呼ぶのに用いられた柱斧という槌のような道具があり、貴人が柱斧で従者を呼んで命じれば従者が何なりと貴人の欲する物を持って来るところから、槌そのものに魔力があるかのような考えが生じたのではないかとしている[8]
また、南方熊楠は、大黒天がガネーシャと習合しで出来るうち本来ガネーシャが持つ斧が変形した可能性があるとしている[9]。この信仰について南方は汎世界的に存在する、雷神の神物とされ崇拝される、「石器時代石斧」はハンマーにも見えることから、雷神の持ち物が斧あるいは槌とされた可能性があるといい、例として「ムジョルニル」を上げる[10]

昔話

一寸法師のほか、日本各地で伝承されている昔話の中では、鬼の所有している宝物として登場するほか、異界を訪問した人物がうちでのこづちをおみやげとして持ち帰り、欲しいものを唱えて振ると願いどおりの物があらわれ長者になったとする展開で登場する。その様子を見ていた隣人がうちでのこづちを借り、欲を出した願いを早口で唱えると誤認されて違うものがあらわれ、痛い目に合うという結末をもつ話も多く存在する。

  • 高知県高岡郡などにつたわる昔話では、売れなかった節季用の薪木を海へ捨てた正直者が竜宮から礼品としてうちでのこづちをもらう[11]
  • 鹿児島県長島町などにつたわる昔話では、末娘の婿が邪慳にあつかわれたことから姑に渡すべき立派な薪(十三生木)を海などに捨てた結果、竜宮から感謝され、うちでのこづちをもらう[12]
  • 紀州(和歌山県)では、継母に虐待される継子が、超自然の存在によって事態を好転させるというグリム童話に収録されまたイタリアポルトガルにも分布する話の中で、継娘の境遇に同情した鬼が「叩くと銭の出る」小鎚を与える。

桃太郎が鬼ヶ島で手にした宝物として隠蓑、隠笠、打出の小槌があげられてもいる例も過去の文献には存在していた[13]山東京伝による絵本『絵本宝七種』(1804年)に書かれた桃太郎の話のなかでも、鬼ヶ島で手に入れたうちでのこづちを桃太郎が振ってさまざまな宝物を出している姿が描かれている[14]

平家物語におけるこづちと鬼

平家物語』巻6「祇園女御の事」には、うちでのこづち自体は登場しないが、うちでのこづちを持った鬼が出たという噂が立ったとする話が記されている[15]

祇園女御平清盛の母親)が白河法皇の愛人だった頃、ある夜その祇園のほとり住まい近くの御堂に、手には「聞こゆる打出の小槌」らしいものが輝き、頭髪も針の山のごとく光る人影が出現し、鬼であると周囲が恐怖した。北面の武士として護衛に付添っていた平忠盛に成敗を命じたところ、それは灯籠をともすためにはたらいていた油つぎの法師であったと判明した。手に持った燃えさしを入れた容器が小槌、頭にかぶっていた雨よけの麦藁が針のような髪と誤認されたのだった。『源平盛衰記』で書かれている同説話では「土器に燃杙(もえぐい)を入れて」おり、これが消えぬように息で吹くと「ざと光り、光るときは小麦の藁が輝き合ひて、銀の針の如くに見えけるなり」と描写されている[13]

ここに書かれている「聞こゆる打出の小槌」という表現から、鬼の持物として「うちでのこづち」が有名であったことがうかがえられ、説話や物語などに見られる鬼の登場する物語がその原典であろうことが考察されている[1]

保元物語』でも源為朝鬼ヶ島に住む鬼の子孫たちから失われた鬼の宝を聞き出す場面などがあり、そのような説話の上で鬼たちのもつ宝物に「うちでのこづち」が加わっていたものと推察されている[1]。『保元物語』で登場している鬼の宝物は諸本によって記述が違い「隠蓑、隠笠、浮履(うきぐつ)、沈履(しづみぐつ)、剣」[16]とその存在がうかがえないが、半井本系統では「うちでの履」という宝物の名があり「うちでのこづち」の誤記ではないかと見られる。

文化

  • 宝づくし(たからづくし)
福を招く宝物であるということから、衣服や調度品などに利用される「宝づくし」という文様の図案のひとつとして用いられている。
  • 小槌笛(こづちぶえ)
うちでのこづちを題材とした郷土玩具。持ち手の部分が笛として音が鳴るよう細工されている。
  • 宝槌(たからづち)
民俗行事などに使われるもので、福の神の持ち物のひとつとして用いられる。青森県北津軽郡鶴田町では「じょばうち槌」(に用いられる木槌)にの葉などを結び、長いをつけたものを家々に投げ込む行事がおこなわれていた[17]

脚注

補注

  1. ^ 『日本大百科全書』(1985年版)では「鎌食初期」とあるが、後の版では「康頼宝物集〔1197年頃〕上」を挙げる

出典

  1. ^ a b c 志田義秀下篇 2 桃太郞槪論」『日本の伝説と童話』大東出版社、1941年、305–6頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1453466 
  2. ^ 南方熊楠『南方熊楠全集第4巻』平凡社、1974年112頁
  3. ^ a b 島津久基校編『お伽草子』岩波文庫 1936年 156頁
  4. ^ 平康頼撰 著宝物集(平康頼撰)、足立四郎吉 編『大日本風教叢書』第1輯、342–3頁、1919年https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/957220 
  5. ^ 高橋, 亨「無名草子における引用関連文献の総合的調査と研究」2004年。 
  6. ^ 川口謙二 『日本の神様読み解き事典』 柏書房 1999年 ISBN 4-7601-1824-1 387頁
  7. ^ a b 権田雷斧 『仏像図鑑』上巻<復刻版> 八幡書店 2000年 ISBN 4-89350-283-2 136頁
  8. ^ 宮崎市定「古代大和朝廷」筑摩書房、1988年収録の「打出の小槌考」(P268~277)
  9. ^ 南方熊楠『南方熊楠全集第1巻』平凡社、1979年593頁
  10. ^ 南方熊楠『南方熊楠全集第1巻』平凡社、1971年589頁
  11. ^ 関敬吾『日本昔話大成』第6巻 角川書店 1978年 14頁  竜宮童子の話型に分類されている。
  12. ^ 有馬英子 『かごしま・民話の世界』春苑堂出版 2003年 24-25頁
  13. ^ a b 井乃香樹『紀記の神話と桃太郎』建設社出版部、1941年https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1439690 
  14. ^ 『江戸のメルヘン 絵本とおもちゃ絵展 目録』 くもん子ども研究所 1988年 12頁
  15. ^ 高橋貞一 編「巻6「祇園女御の事」」『平家物語』 上、講談社、1972年、376-頁。 
  16. ^ 井乃香樹 『紀記の神話と桃太郎』 建設社出版部、1941年。169頁
  17. ^ 『津軽の民俗』 吉川弘文館 1970年 246頁


関連項目


打ち出の小槌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 10:12 UTC 版)

THE MOMOTAROH」の記事における「打ち出の小槌」の解説

一寸法師」の物語登場する道具で、物を大きくする効果がある。作中では一寸法師の子孫である七尺一寸がこれを所持しており、試合中に「手だけを大きくする」「足だけを大きくする」等の使い方をしていた。試合最中コミッショナー称したコーテツローが没収し牛馬鹿丸身体や顔を大きくして遊んでいた。後に一応七尺兄弟返還された様である。普段兄弟が身に着けているヘッドギア耳部分にある、「おわん」に収めてある。

※この「打ち出の小槌」の解説は、「THE MOMOTAROH」の解説の一部です。
「打ち出の小槌」を含む「THE MOMOTAROH」の記事については、「THE MOMOTAROH」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「打ち出の小槌」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



打ち出の小槌と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「打ち出の小槌」の関連用語

1
小槌 デジタル大辞泉
100% |||||

2
大黒連歌 デジタル大辞泉
100% |||||


4
一寸法師 デジタル大辞泉
100% |||||

5
宝の槌 デジタル大辞泉
100% |||||

6
宝尽し デジタル大辞泉
100% |||||

7
節分 デジタル大辞泉
100% |||||




打ち出の小槌のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



打ち出の小槌のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのうちでのこづち (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのTHE MOMOTAROH (改訂履歴)、日本の民話 (漫画) (改訂履歴)、槌 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS