戦争責任問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 03:41 UTC 版)
「ヴェルサイユ条約#制裁裁判」も参照 中央同盟国の戦争責任問題についてはロバート・ランシングを議長とする戦争責任委員会(英語版)が検討を行い、3月19日に報告書を提出した。この中で戦争責任は第一にドイツとオーストリア=ハンガリー帝国、第二にトルコとブルガリアにあるとした上で、「戦争の法と慣習ならびに人道の法に違反した」元首を含むすべての国民が訴追の可能性があるとしたが、戦争を引き起こした責任については訴追を断念した。 ヴィルヘルム2世の訴追にはアメリカおよび日本は当初から反対の立場を表明していた。国際慣習や戦時国際法により国家元首の罪を国際法廷で裁くという前例がなく、実定国際法上の根拠が脆弱とするのが反対論の主張であった。また日本はこの問題について日本の国体論を非常に慎重に意識していた。一方で英仏は皇帝訴追論の最右翼であり、結局は戦時国際法違反や人道上の罪を問うのではなく「国際道徳及び条約の尊厳に対する重大な犯罪」という曖昧な文言によりアメリカと日本は妥協した。戦争責任審査委員会の報告書はアメリカと日本による附属留保が付されて本会議に提出された。日本は「前独帝処分問題に対する日本の覚書」を講和会議に提出し、元首の交戦法規違反に対する刑事責任を容認することに留保を表明した。またヴィルヘルム2世がすでにドイツ帝国皇帝位を退位し元首の地位ではなく、「前皇帝」いち個人として国際法廷で審問される点については同意した。米国の国務長官であり戦争責任審査委員会の議長もつとめたロバート・ランシングは政治上の制裁は政治家の処理すべき問題であり裁判官の関与すべき問題ではないとの立場であった。 この会議の最中から、中立国オランダに亡命していたヴィルヘルム2世の身柄引き渡し交渉が続けられていた。しかしオランダ政府は国内法に違反していないとして拒否した。英仏の強硬論も世論に配慮した面が強く、フランス政府は裏面でオランダ政府に働きかけ、ヴィルヘルム2世の引渡し要求に応じないよう助言している。そのため連合国も再度の引き渡し要求や欠席裁判を行うこともなかった。
※この「戦争責任問題」の解説は、「パリ講和会議」の解説の一部です。
「戦争責任問題」を含む「パリ講和会議」の記事については、「パリ講和会議」の概要を参照ください。
- 戦争責任問題のページへのリンク