成虫の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/29 21:56 UTC 版)
成虫では、雌はやはり集団を形成するが、雄は互いに距離を取って生活している。これは雄が縄張りを形成しているためである。雄は雌の集団を含む縄張りを持ち、そこにいる雌と交尾する。縄張り雄を取り去った場合、別の雄が入り込んでそれらと交尾する。他の雄が侵入してきた場合、縄張り雄は素早くその雄に突進し、大抵の場合、それだけで侵入雄は退散する。それでも侵入雄が退散しない場合、両者は後ろ向きに対峙し、その発達した後肢で相手を挟み込もうとする。相手の胴を締め付けようとする戦いは、普通は数分で終了するが、希に1時間を超えるという。その際、両者組み合ったまま地面に落ちることがあり、この時の反応は双方で大いに異なる。縄張り雄は素早く起き直り、出来るだけ早く縄張りに戻ろうとする。侵入雄はそれほど急がず、ゆっくりと元の株か、あるいは別の株へ移動する。 縄張りにあぶれた雄から見ると、交尾の機会は主として縄張りを奪取することである。上記のような闘争の勝敗は、一般に縄張り雄に有利であるが、あぶれ雄の方が相対敵意に身体が大きい場合、縄張り雄の勝率は7割程度である。つまりあぶれ雄は自分より小さな縄張り雄に喧嘩をしかければ、3度に一度は縄張りを奪える。その結果、小型の雄が次第にあぶれることにある。縄張り雄の目を盗んでの交尾はごくまれにしか行われない。また、縄張り雄はそれを見つけるとたとえ自分の交尾中であっても妨害する。 ただし縄張り雄にとって、縄張り防衛は一定のコストを伴う。侵入者が多くなると、縄張り防衛を諦める可能性がある。実験的に野外ケージ内で雄だけを追加する実験を行うと、雄の密度が増えるに連れ、縄張りが崩壊する株が出てきた。それらは雌の数が多く、そのために雄の侵入回数の多い株であり、そのような株では多数のあぶれ雄が集まり、小競り合いをしながらも多くの個体が交尾を行う。この状況下では小型の雄も交尾が可能となった。 雌の集団は平均では2-3頭で、多い場合には10頭を超す。それを縄張りに持つ雄は1日で5頭程度までを相手に交尾が可能である。ただし雌は雄の縄張りに拘束されず、時に株から株へと移動する。他方で集団が居場所を定めると、普通は1週間程度はそこにとどまる。雄は雌がいなくなると、その日のうちに縄張りを放棄する。つまり、雄は雌のいる場所に縄張りを作り、そこにいる雌と交尾する権利を独占するが、雌を占有するわけではない。雌は勝手に縄張りをでることも出来るし、入ってくることも出来る。その点でほ乳類に見られるハレム制とは大きく異なる。 雌が集団を作ることの意味については判断が出ていない。ただ、藤崎は、雌集団が大きいとより大きい雄がそこに縄張りを作る傾向があることなどから、雌は集団を作ることで雄同士を争わせ、より強い雄との交尾の機会を作る意味があり、その意味では性淘汰と言えるのではないかとの見方を示している。 なお、本種の交尾時間は平均で45分ほどで、これはカメムシ類の交尾時間としてはきわめて短いものである。これは上記のように何時来るかわからない侵入者をすぐに追い出すような習性への適応と考えられる。
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