慢性腎不全と透析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 18:05 UTC 版)
腎臓には糸球体濾過、尿細管の再吸収といった尿の生成、老廃物の排出、免疫、内分泌、代謝といった機能がある。免疫は細胞性免疫への関与が示唆されており、腎不全の患者では細胞性免疫の低下が認められる。また、内分泌には傍糸球体装置によるレニンの分泌やエリスロポエチンの分泌、ビタミンDの活性化、キニン、カリクレイン、プロスタグランジンの分泌などがある。 腎機能障害、慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)ではこれらの機能が障害されていく。腎機能を示す指標として、尿検査によるタンパク尿、血尿といった所見や、クレアチニンクリアランスを用いられる。採血検査では、血中尿素窒素 (BUN)、クレアチニン (Cr) 値がある。クレアチニンは骨格筋由来の代謝産物であり、体格や運動量の影響を受ける。尿素窒素はタンパク質の代謝産物であり、感染症、ステロイド、消化管出血や食事内容などに影響を受けるため、両者を見ながら腎機能を考えていく必要がある。一般にクレアチニンは、2mg/dL以上になるとネフロンの数は正常の半分以下になっていると考えられる[独自研究?]。クレアチニンが5 - 7 mg/dLあたりになると透析の導入が検討される。 慢性に進行した場合には、クレアチニンクリアランスが10mL/minを切るまで通常の生活を送る上で自覚症状が乏しい場合も多く、倦怠感などで病院を訪れて血液検査を行って初めて腎臓がほとんど機能していないと知ることもある。 透析はクレアチニンクリアランスが10mL/分(非透析時も含めた時間平均値)の血液浄化能力しかないため、かなりの時間的制約があるにも関わらず活動、食事などに関しては慢性腎不全と同様に制限を加えなければならない治療法である。そのため、透析導入をできるだけ遅らせる治療がなされている。それが降圧薬による血圧コントロールや食事療法である。旧厚生省研究班の透析導入基準(案)によれば、臨床症状、腎機能(検査値)、日常生活障害度、年齢によって腎機能障害のスコア化を行い、60点以上となったら透析導入を行う、と定めている。ただし、基礎疾患が糖尿病である場合、60点に達していなくても透析導入に踏み切ることもある。透析患者の予後は動脈硬化による心疾患が多いため、糖尿病がある場合には早期導入した方が動脈硬化の進行を食い止められる可能性が示唆されているが、まだ結論は得られていない。 透析には腹膜透析や血液透析などがある。近年では[いつ?] PD first という考え方が主流であり、患者の生活環境が許すのならまずは腹膜透析を行い(残腎機能が保てているのなら)、4 - 5年したら血液透析へ移行するのが最も良いとされている。あくまで残存腎機能が保てていることが前提であるため、血液透析回避目的で腹膜透析を継続することは避けるべきである。また、PD last という考え方もあり、こちらは血液透析に耐えられない終末期医療において、腹膜透析を利用した最小限の腎機能代償を行い、生活レベルの改善を図るものである。なお、急性腎不全は病態が全く異なるため、上述とは全く異なる。
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