想定されていた運用計画
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「マルス96」の記事における「想定されていた運用計画」の解説
マルス96はフォボス計画の探査機も打ち上げた4段ロケット、プロトン8K82K/11S824Fで11月16日に打ち上げを予定していた。4段目はブロックD-2と呼ばれ、衛星待機軌道への投入時に一度点火し、その後火星への軌道に投入するために再点火される予定であった。4段目を使用し終わると衛星は分離され、アンテナを展開し、衛星付属の推進ユニットが使われる予定であった。その後推進太陽電池とPAIS科学プラットフォームを展開する予定であった。 火星までの航行は10ヶ月程度が見積もられ、決定までに2回コース修正がおこなわれた。天体物理学研究は航行中にも行われる予定であり、火星到着は1997年9月12日に見積もられた。 到着の4日から5日前に、北半球の2箇所の別の場所に着陸させるために両方の火星地上局を投下する予定だった。投下後、マルス96には軌道投入の準備として軌道を偏向する操作が行われる。適切な時間に、推進ユニットのメインエンジンを進行方向に向け、その状態で点火し速度を低下させ火星周回軌道に投入する。当初の軌道は近点が500kmで遠点が52,000km程度であり、軌道周期は43時間程度が見積もられた。 一方で降下する両地上局は火星表面に軟着陸する。両方の着陸方法は同一で、これらの地上局は空気抵抗で減速をはじめ、19.1kmの高度でパラシュートを展開、18.3kmの高度でヒートシールドを切り離し、17.9kmの位置でエアバッグを膨らませ始める。着陸時はパラシュートを切り離しエアバッグをクッションにして地上に落とされる。エアバッグは役割を終えると地上局を切り離して露出させる。その後4枚のペタルを展開し、地上局は上空を飛行するオービターに向けて信号を送るという段取りであった。 火星軌道到達後の衛星部分の最初の任務は着陸が確認された火星表面の送信局の信号を受信することだった。ペネトレーターの発射は火星周回軌道投入後7日後から28日後までに行われる予定だった。衛星の主要科学フェイズはペネトレーターの投入が終わり、推進ユニットが放棄された後に開始される予定だった。 2機のペネトレータの投下は同時に行われ、衛星からの分離に続いて、安定のためのペネトレータの回転が始まり、落下のために液体燃料ロケットで速度が低下させられる。20から22時間後、ペネトレータは火星の大気に達しブレーキ装置が展開される。衝突時には前部が切り離され、後部に比べ火星表面の深い位置まで突き刺さる。その後、着陸の確認のために衛星との通信セッションを行う。 月軌道投入し、ペネトレーターが投下されておおよそ1か月後、衛星部からLWR装置とARGUSプラットフォームの展開に邪魔になる推進ユニットを切り離し、放棄する。衛星は計画では1年間運用される計画であった。推進ユニットの切り離し後は、オービターは軌道維持用の低出力スラスターシステムを利用する。名目上の観測期間の間、ダイモスへの近接飛行が可能であったが、フォボスへの近接飛行は不可能であった。ミッションの延長が認められれば、2-3か月間の空力制動が維持でき、軌道周期は9時間程度になる予定であった。
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