情報整理術・知的活用術として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/14 17:01 UTC 版)
「スクラップブック」の記事における「情報整理術・知的活用術として」の解説
現代では新聞記事はインターネットで検索できるようになっているが、あえて紙の新聞を用いスクラップを作ることによる知的効用を説くものもいる。『週刊こどもニュース』などで知られるジャーナリストの池上彰は、紙の新聞でスクラップを作っているとときに目的の記事の横に思いもよらないような記事を発見でき、そうした関係のない記事同士が結びついて思いがけない発想が生まれること、また特にジャンルを決めずに切り抜いていく場合には、溜まったスクラップを眺めることでしばしば自分でも知らなかった自分自身の思考や興味・関心に気づくことがあるということを説いている。 『声に出して読みたい日本語』などの著書で知られる教育学者の齋藤孝は、子供・学生の日本語能力を高めるという観点からスクラップブック作りを利用したトレーニングを勧めており、やはり紙の新聞のスクラップをつくることは関心領域を広げることにもつながると説いている。齋藤の勧めるトレーニングの方法は、好きな記事を切り抜いてスクラップブックの左ページに貼り、右ページに記事の要点と自分のコメントをまとめた上で、それをもとに30秒間のプレゼンテーションをするというものである。 一方でスクラップブックには、一度記事を貼ると剥せないために分類のし直しが困難であることや、かさばりやすいため量が増えるとどこになにがあるのかわからなくなりがちであるといった整理上の欠点もある。社会人類学者の梅棹忠夫は『知的生産の技術』(1969年)のなかで、こうした欠点に気づいたために一度はじめたスクラップブックをすぐにやめてしまった自身の経験に触れながら、市販のスクラップブックについて次のように述べている「ひょっとしたら、あれは永遠に初心者むきの材料としてうれているのかもしれない。だれでも、一、二冊ほどつくってみて、これはだめだと気がついて、やめてしまうのではないだろうか」。続いて梅棹はその後に思いついた記事の整理方法として、A4のハトロン紙の台紙の片面に、大きさに関わらず記事を一つだけ貼るようにしたうえで、それを項目別にオープンファイルに入れてまとめるという方法を紹介している。前述の池上彰は、はじめはスクラップブックを使用していたものの、やはり分類のし直しができない不便に気づいてルーズリーフを使うようになり、のちにはそれを綴じずにクリップやクリアファイルを使ってまとめるようになったという。 他方で三國一朗は、スクラップブックを主題にしたエッセイ集『鋏と糊』の中で、梅棹が述べるようなスクラップブックの欠点を認めながらも、スクラップブックには台紙方式にはない、「自分の主観や個性を投影させる」独特の喜びがあると述べている。また三國は「なにがどこにあるのかわからなくなる」ことへの対策として、ノートに簡単な索引を作ることを勧めている。 郷土史の記録のためにスクラップブックを作成する図書館もある。例えば京丹後市立峰山図書館は1952年(昭和27年)の開館以来継続してスクラップブックを作成し続け、郡山市中央図書館では1990年(平成2年)頃より毎朝50テーマに分けて新聞記事を収集・分類している。 なおネット上の記事や情報などに対しても、これらをクリップしスクラップブック風に保存するプログラムがある。Mac OS(Mac OS 9以前)に付属していたデスクアクセサリ「スクラップブック」、ウェブブラウザfirefoxの拡張機能「ScrapBook」、Windows向けの「紙copi」などである。
※この「情報整理術・知的活用術として」の解説は、「スクラップブック」の解説の一部です。
「情報整理術・知的活用術として」を含む「スクラップブック」の記事については、「スクラップブック」の概要を参照ください。
- 情報整理術・知的活用術としてのページへのリンク