後から教職に就くことを希望しても、新免許はコストがかかる
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 02:59 UTC 版)
「教員免許更新制」の記事における「後から教職に就くことを希望しても、新免許はコストがかかる」の解説
有効期間の無い旧免許状(かつて授与されていた1級または2級の普通免許状を含む)であっても、講習を受けないと教員になる効力は失うが、これに関して文部科学省は、「履歴書などに教員免許を所持している旨の記載をしていただくことは可能ですが、更新講習を受講する必要がある旨を併記していただく必要があります」などとしている。そのため、いわゆる回復講習の余地が残されている。しかし、新免許状では有効期間が明記されているため、期間を過ぎた免許は一旦失効になる(ここが旧免許状とは異なる)。ただし、教員免許取得のために修得した大学の履修単位は消滅しないため、法的には再度、免許申請が必要になる。このときに更新講習を受講する必要がある。そのため、さまざまな立場の教員志望者にとって、教員となれる可能性が残されているもののコストや手続きが多くなる。 前述のとおり、更新講習は受講資格がある。免許法第9条の3第3項は、 教育職員 教育職員に任命され、または雇用されることとなっている者、これに準ずるもの について、更新講習を受講できることと定めている。 ところが、文部科学省令(免許状更新講習規則第9条第2項)はこの法律を極めて排他的、かつ、具体的に定めてしまっている。現に教職員である者以外で、受講資格のある(免許状更新できる)者は次の3つのみである。 学校の校長、副校長、教頭又は教育職員であった者であって、教育職員となることを希望する者 次に掲げる施設に勤務する保育士就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第6条第2項に規定する認定こども園 児童福祉法第39条第1項に規定する保育所 児童福祉法第59条第1項に規定する施設のうち同法第39条第1項に規定する業務を目的とするもの(幼稚園を設置する者が設置するものに限る) 教育職員に任命され、又は雇用されることが見込まれる者 この省令は、教員免許更新制のための議論が行われた中央教育審議会教員養成部会での「ペーパーティーチャーは、免許状の再取得が必要となった時点で、回復講習を受講・修了することが必要」とする内容や、中央教育審議会の答申の「社会人を学校教育に積極的に活用していくことが必要」などとする趣旨と矛盾する可能性がある。 民間人の雇用 有効期間付きの免許状を授与された者であって、教員経験の無い民間企業等で働く社会人が、失効期限を迎えた場合、教員採用試験に合格するか、または、講師登録されなければ、更新講習を受講する資格が無い。教員採用試験の受験や講師の登録は、教員免許状を現に有していることが条件となっており、旧教員免許は応募可能であるものの新免許状では期間切れで法的に失効した場合に、応募できない可能性もある。 講師の登録自体は採用試験合格と比較して容易な方法であるが、当該自治体の教員採用試験の受験可能年齢の上限を超えている場合や心身状態等によっては登録そのものができないこともある。そのため、教員経験の無い社会人が取得した免許状は、一度効力を失うと、教員になりたくとも更新講習を受講することが出来ず、免許状の効力を再び回復することができなくなる可能性もある。 教員採用試験浪人 大学等に在学中に教員採用試験に合格できず、卒業後も合格を目指している、いわゆる教員採用試験浪人者についても更新講習の受講資格がない。教員採用試験に合格することにより、はじめて更新講習を受講することができるようになるものの、採用試験合格後から採用日までの短い期間に自費で講習を受講しなければならない場合が多い。手続きや講習日等の期間が切迫する等、金銭的、時間的な負担が大きくなる。 多様な人材の雇用 地域によっては、民間の社会経験者を別枠(特別の選考方法)で採用したり、採用した教員を民間企業へ長期間に渡って研修に出したりするなど、多様な経歴のある教員のニーズが高いにもかかわらず、文部科学省が作成した省令では、教員や教員経験者以外の民間企業に勤める社会人等に対応する記載はない制度としてスタートした。 介護、育児、ボランティア等従事者を排除 諸事情から介護、育児、ボランティア(青年海外協力隊等の国際貢献も含む)等に従事し社会的、国際的な責任を果たしているものの、教員経験の無い者についても、更新講習の受講資格が無い。旧免許状では、あくまでも、教壇に立てなくなるだけであり、免許状が無効となり消滅するわけではない。しかし、新免許状では有効期間が過ぎると法的に免許が失効するため、再度、免許申請が必要となりコストがかかる。 教員免許状取得時の介護体験の義務化によって、教育職員として介護やボランティア体験等の必要性が制度化されているにもかかわらず、介護、育児、ボランティア等の貴重な実践者に対応できる規定がないという矛盾が存在する。
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