廃線後の軌道と車両の活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/08 20:20 UTC 版)
「神岡鉄道神岡線」の記事における「廃線後の軌道と車両の活用」の解説
2021年時点で、廃線となった軌道は一部区間が観光用に保存されており、軌道用自転車で巡ることができるほか、鉄道車両1両が動態保存されており、運転体験を楽しむことができる。 2006年9月、当時の飛騨市初代市長の船坂勝美が定例市議会で、神岡鉄道廃止後に鉄路を不定期の観光鉄道として存続させる道を模索する意向を表明した。同年11月29日には、三井金属鉱業との間で存続に向けて15億円の寄付(再開後の経営に失敗した場合に必要となる線路撤去費などへの備えなど)と軌道の無償譲渡を受けることで大筋合意した。また、2007年1月10日に飛騨市神岡振興事務所内には神岡鉄道再開準備室を設けた。船坂市長は「2008年5月には(観光鉄道として)再開させたい」と発言。設立から5年後の黒字を目指すとしていたが、2008年2月に行われた市長選挙で、船坂市長は観光鉄道化を含めた現市政を批判する新候補に敗北した。2代目市長の井上久則は「15億円の寄付金は再開に向けての物とは考えていない。レールや鉄橋は撤去する。」と表明しており、計画再開は非常に困難な見通しとなった。 一方、地元の住民グループ「神岡鉄道協力会」のメンバーは廃線の線路上で軌道自転車を運行する「レールマウンテンバイク」の運行を考案。2007年から飛騨市観光協会に飛騨市も協力する形で廃線跡のうち、2.9kmで実験運行を開始した。実験運行は主に土日と祝日で実施され、好評を博したことから営業日数が徐々に増やされた。2012年からはシーズンを通しての運行となり、運営はNPO法人の「神岡・町づくりネットワーク」に移管された。レールマウンテンバイクは「Gattan Go!!」(ガッタン ゴー)の愛称で運行。2013年の利用者は2万6249人。2012年には鉄道の日実行委員会の日本鉄道特別賞を受賞した。人気の高まりに対して、1日8便で310人までしか利用できず、予約が必要な状況になっている。その対策もかねて、「神岡・町づくりネットワーク」では未使用の廃線跡も活用する「旧神岡鉄道の利活用プラン」を市に提出し、それに対して市は2013年12月から一部区間の安全対策調査を開始した。 2016年に都竹淳也が3代目市長が就任すると、同年12月に市議会は補正予算に、廃線跡を活用した「ロスト・ライン・パーク」構想のための費用を盛り込み、シンポジウムの開催と、旧神岡鉱山前駅に保存中の車両の中の1両(KM-101)を旧奥飛騨温泉口駅に移設する事業を実施するとした。移設の際には廃止以来約10年ぶりに自力走行を実施することが発表され、予定された2017年4月8日に実際に走行した。その後は奥飛騨温泉口駅で展示し、冬に入る頃には再び自力走行により旧神岡鉱山前駅の車庫に戻る。 軌道のみならず、鉄道車両についても観光用の活用に向けて整備が進められ、2020年10月、廃線および構想から14年の歳月を経てついに動態保存による観光鉄道が実現した。旧奥飛騨温泉口駅 - 旧神岡大橋駅間では、普通自動車運転免許証を持っていれば、 公式サイトから予約を行うことで、実際の神岡鉄道の運転士の指導を受けながら、車両の運転体験を行うことができる。2021年には、運転体験可能な区間が旧神岡鉱山前駅前まで延長された。
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