屋上運転台式前面展望車(セッテベロ形・パノラマ形展望車)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 09:35 UTC 版)
「展望車」の記事における「屋上運転台式前面展望車(セッテベロ形・パノラマ形展望車)」の解説
運転台を屋根上に上げ、客席を車両最前面に置いて展望を確保する構造の鉄道車両は、古い例では1930年代にフランスで製作された気動車「ブガッティ・ガソリンカー」等が存在する。 しかし、この種の展望構造を採った高速列車で世界的に有名となった最初は1953年にイタリア国鉄が開発した7両編成のETR300形である。この豊かな曲面を備えた流麗な特急電車は「セッテベロ」 (Settebello) の愛称を与えられ、列車名にもこの愛称が採用された。この「セッテベロ」とは、「settebello-denari(7人の美女)」というトランプ・ゲームの役(切り札)のことである。車体にも「settebello-denari」のイラストが描かれている。1960年には同様の構造を持つ4両編成のETR250形も製造されている。これらの電車は文化映画『ベスビアス特急』で紹介されて以来、日本でも知られることとなり、名実ともにイタリア国鉄を代表する車両であった。なお、2004年時点では1編成を残して廃車されている。 日本でこの展望構造を採った電車の最初は、1961年に開発された名古屋鉄道の元祖「パノラマカー」7000系である。本形式は「鉄道ファン」誌の創刊号の本誌を飾り一躍全国区で有名となった。このため日本では(セッテベロ型という言葉も通じるが)この形態を「パノラマ形」と称するのが一般的である。これに続き小田急電鉄でも小田急ロマンスカーの系統である1963年開発の3100形「NSE」でこの構造を採用した。名古屋鉄道は同様な構造を1963年製造の7500系でも採用、また小田急電鉄も1980年の7000形「LSE」、1987年の10000形「HiSE」、2005年の50000形「VSE」も同様の構造を採用している。同社では、ETR300形同様の連接構造もともに採用され、改良を続けながら踏襲されている。2017年に製造され、2018年より営業運行を開始した70000形「GSE」では「VSE」以来13年ぶりに展望構造が採用されたが、台車は連接構造ではなく通常のボギー車となっている。 国鉄・JRにおけるセッテベロ形の展望電車は、国鉄末期の1987年に165系をジョイフルトレインとして改造した「パノラマエクスプレスアルプス」が最初である。なおこの車両は2001年に富士急行に譲渡、形式を2000形に変更の上、「フジサン特急」として運用された。続いてJR東日本で485系を改造して1990年に登場した「シルフィード→NO.DO.KA.」においても同様のセッテベロ形が採用された。 気動車ではキハ183系に例があり、1988年にJR九州が「オランダ村特急」用に製作した1000番台と1990年にJR北海道が製作した「クリスタルエクスプレス トマム & サホロ」向け5100番台がある。前者は数回の変遷を経て豊肥本線特急「あそぼーい!」に運用されているが、前面展望席は制度上・発券上も特別席(パノラマシート)扱いを受けている。後者は一般席と同じ扱いであったが、2010年に発生した特急「スーパーカムイ」踏切事故を受けて座席を撤去、 立入禁止措置をとられ展望席は廃止となった。
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