局所環の層
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 03:09 UTC 版)
可微分多様体を定義する同様だがより技術的なアプローチは環付き空間の概念を用いて定式化できる。このアプローチは代数幾何学のスキームの理論に強く影響を受けているが、微分可能な関数の芽の局所環を用いる。これは複素多様体の文脈で特にポピュラーである。 Rn 上の基本的な構造層を記述することから始める。U が Rn の開集合のとき、 O(U) = Ck(U, R) を U 上のすべての実数値 k 回連続微分可能な関数からなるとしよう。U が変化すると、これは Rn 上の環の層を決定する。p ∈ Rn に対する茎 Op は p の近くの関数の芽からなり、R 上の代数である。とくに、これは一意的な極大イデアルが p で消える関数からなる局所環である。対 (Rn, O) は局所環付き空間の例である:各茎が局所環である層を伴った位相空間である。 (Ck 級の)微分可能多様体は対 (M, OM) からなる。ここで M は第二可算ハウスドルフ空間であり、OM は M 上定義された局所 R-代数の層であって、局所環付き空間 (M, OM) が (Rn, O) に局所同型なものである。このようにして、可微分多様体は Rn をモデルとしたスキームと考えることができる。これが意味するのは、各点 p ∈ M に対して、p の近傍 U と関数の対 (f, f#) で次のようなものが存在するということである: f: U → f(U) ⊂ Rn は Rn の開集合の上への同相 f#: O|f(U) → f* (OM|U) は層の同型 f# の局所化は局所環の同型 f#f(p): Of(p) → OM, p. この抽象的な枠組みで可微分多様体を研究する重要な動機付けがいくつかある。まず、モデル空間が Rn である必要性の a priori な理由はない。例えば(とくに代数幾何学において)これを正則関数の層(したがって複素解析幾何の空間に辿り着く)あるいは多項式の層(したがって複素代数幾何において興味の持たれる空間に到達する)を伴った複素数の空間 Cn にとることができる。おおまかには、このコンセプトはスキームの任意の適切な概念に適合できる(トポス論を参照)。第二に、座標は構成にもはや明示的に必要でない。座標系の類似物は対 (f, f#) であるが、これらは(チャートやアトラスのように)議論の中心にあるのではなく単に局所同型のアイデアを定めているだけである。第三に、層 OM は明らかに関数の層では全くない。むしろ、(局所環の極大イデアルによる商による)構成の結果として関数の層としてそれが出現する。したがってそれは構造のより原始的な定義である(綜合微分幾何学(英語版)の項を参照)。 このアプローチの最後の利点は微分幾何と位相幾何の研究の基本的な対象の多くの自然な直接的記述ができることである。 ある点での余接空間は Ip/Ip2 である、ただし Ip は茎 OM, p の極大イデアルである。 一般に、全余接束は関連したテクニックにより得ることができる(詳細は余接束を参照)。 テイラー級数(およびジェット(英語版))は OM, p 上の Ip-進フィルトレーションを用いて座標と独立にアプローチできる。 接束(あるいはより正確には断面の層)は OM から二重数の環への射の層と同一視できる。
※この「局所環の層」の解説は、「可微分多様体」の解説の一部です。
「局所環の層」を含む「可微分多様体」の記事については、「可微分多様体」の概要を参照ください。
- 局所環の層のページへのリンク