余接空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/17 02:48 UTC 版)
微分幾何学において、滑らかな(あるいは可微分)多様体の各点 x に、x における余接空間(よせつくうかん、英: cotangent space)と呼ばれるベクトル空間を取り付けることができる。余接空間は、より直接的な定義があるが(下記参照)、典型的には、x における接空間の双対空間として定義される。余接空間の元は余接ベクトル(英: cotangent vector)あるいは接余ベクトル(英: tangent covector)と呼ばれる。
性質
連結多様体上のすべての余接空間は多様体の次元に等しい同じ次元をもつ。多様体のすべての余接空間は「貼り合わせて」(すなわち和集合をとり位相を与えて)次元が2倍の新しい微分可能多様体、多様体の余接束を作ることができる。
点における接空間と余接空間はどちらも同じ次元の実ベクトル空間でありそれゆえ多くの可能な同型写像を経由して互いに同型である。リーマン計量やシンプレクティック形式の導入は点における接空間と余接空間の間の自然同型を任意の余接ベクトルに自然な接ベクトルを割り当てて生じる。
正式な定義
線型汎関数としての定義
M を滑らかな多様体とし x を M の点とする。TxM を x における接空間とする。このとき x における余接空間は TxM の双対空間として定義される:
- Tx*M = (TxM)*
具体的には、余接空間の元は TxM 上の線型汎関数である。つまり、すべての元 α ∈ Tx*M は線型写像
- α: TxM → F
である、ただし F は考えているベクトル空間の基礎体である。例えば、実数体。Tx*M の元は余接ベクトルと呼ばれる。
別の同値な定義
いくつかのケースでは、接空間に言及することなしに余接空間の直接の定義をしたいかもしれない。そのような定義は M 上の滑らかな関数の同値類の言葉で定式化することができる。インフォーマルには、x の近くで同じ一次の振る舞いをするときに2つの滑らかな関数 f と g は点 x で同値であるという。余接空間はすると x の近くの関数のありとあらゆる一次の振る舞いからなる。
M を滑らかな多様体とし x を M の点とする。Ix を x で消える C∞(M) のすべての関数からなるイデアルとし、Ix2 を
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